IT市場にクラウドが登場して以降、ネットワークなど環境が整い、コスト面の魅力やサービスが充実してきたことから、国内でも多くの企業がクラウドサービスを利用するようになりつつあります。しかし、実際にはコンプライアンスやセキュリティ、パフォーマンスなど、さまざまな事情からすべてをクラウドで運用するということは事実上困難です。
そのため、自社システムのどこからどこまでをクラウド利用するかを考える時代になってきています。そんな中で、クラウドとのメリット共存を可能にする「ハイブリッドクラウド」による運用を考える企業が増えてきています。今回は、このハイブリッドクラウドについて考えてみます。
クラウド・オンプレミスだけの運用は危険!
クラウドが登場した当初は、クラウドにするかオンプレミスにするかといった極端な二者択一の発想が台頭した時期がありました。しかし、冷静な視点で見た場合、依然としてどちらにも運用上の危険性があります。まず、双方の危険性をしっかり理解することが重要です。
・クラウドだけでの運用の危険性とは
クラウドだけでシステムを運用した場合、ERPのように重要なデータを外部に持ち出すかどうかといった部分では、セキュリティ上で社内のコンプライアンスをどうしてもクリアできない部分が出てしまうことがあります。また、自社の基幹システムをクラウドに完全移行した場合、システムのスペックをクリアしていても、ネットワークなど環境の制約などで、「パフォーマンス上問題が出る」といったデメリットも実際に生じ始めています。
コスト面や条件、規模次第では必ずしもオンプレミスより安くないこともあります。また、ITマネジメント上でも、すべてのシステム環境をベンダーに依存することになります。そのため、障害が発生した場合、「自社では何も手を付けられない」という危険性も可能性として考えておかなくてはなりません。このような事情から、国内ではクラウドだけですべてをまかなえる企業は事実上存在しない状況です。
・オンプレミスのみでの運用危険性とは...
一方、国内では長くITの基本として利用されてきたオンプレミスによる導入も、そもそもの導入費用がかさむことはデメリットです。また、実装までの導入期間が長く、短期間での新規事業のサービスインには向かないという点もデメリットになります。さらに、内容次第ではランニングコストがかかるうえに、専門のシステム部門担当者を必要とするため、新興企業において「IT開発と運用は非常にコストのかかるもの」という存在になっていることがデメリットです。
・固定的に考えず用途にあわせて使い分けをすることが重要
このように、クラウド、オンプレミスともにさまざまなデメリットがあります。実際に利用するうえでのベストプラクティスは、片方のみを選択するのではなく、用途や状況に応じて双方をうまく使い分けしていくことといえるでしょう。実際に、多くの企業がハイブリッドクラウドを取り入れ始めています。では、ハイブリッドクラウドとはどのようなものでしょうか。
ハイブリッドクラウドとは
近年、最適なITインフラを実現するうえで注目されているのがハイブリッドクラウドです。ハイブリッドクラウドとは、オンプレミスの自社システムとプライベートクラウドならびに、パブリッククラウドを適宜うまく組み合わせて利用していこうとする方法です。導入・利用する企業の環境や要件にあわせて柔軟な組み合わせが可能である点は、大きな魅力となります。ハイブリッドクラウドのメリットを解説する前に、3つの仕組みのメリット、デメリットを整理しておきましょう。
メリット | デメリット | |
オンプレミス |
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プライベートクラウド |
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パブリッククラウド |
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このように三者三様で、メリットとデメリットは混在しています。
これら3つの仕組みのメリットを取り入れたハイブリッドクラウドには、以下3点のメリットがあります
【ハイブリッドクラウドのメリット】
・データを守れる
・負荷分散ができる
・比較的低価格でセキュリティを確保できる
ハイブリッドクラウドでは、オンプレミス、ハイブリッドクラウドなどデータを分散して物理的に異なる場所でデータを保存することで、マルウェアの攻撃や災害からの素早い復旧が可能です。パブリッククラウドによる比較的安価な負荷分散も、ハイブリッドクラウドで取り入れることができます。
また、機密性の高いデータはオンプレミスやプライベートクラウドにしたり、重要度がそこまで高くないデータはパブリッククラウドに切り分けて保存したりすることにより、比較的低価格でセキュリティを覚悟できる点も大きなメリットです。
ハイブリッドクラウドでは3つの仕組みがそれぞれに持つメリットを最大限に活かした組み合わせを考えることが重要です。実際にハイブリッドクラウドを自社に導入した企業では、3種類のサーバシステムを用途にあわせて絶妙に使い分けることに成功しています。
ハイブリッドクラウドの導入例
ハイブリッドクラウドの利用や運用の例として、BCP対策と短期的なサーバ負荷への対策をご紹介します。
1. BCP対策
災害などの重大な事態でも自社のデータを確実に保全し、非常時でもできる限り迅速に事業再開することが求められるような業種の場合は、クラウドとオンプレミスの両方でデータバックアップを取ることで対策が可能です。
2. 短期的なサーバ負荷への対策
季節性のあるイベントや限定商品のある通販サイトなど、ごく一時期に限ってたくさんのアクセスを集めるようなサービスを提供している企業の例です。短期的なトラフィックの増大のために自社のサーバシステムを増強するのはコストパフォーマンスがあまりよくありません。ここで、必要なタイミングだけ一時的にクラウドサーバを増強してみましょう。トラフィックが解消されたタイミングで増強したクラウドサーバの契約を解除することで、コストを抑えながら問題となるタイミングでのサーバダウンが回避可能となります。
導入にはオンプレミス・プライベートクラウド・パブリッククラウドの仕分けが必要!
ハイブリッドクラウドを導入するには、どのデータを上記3つの仕組みにするかを仕分ける必要が出てきます。そのうえ、ハイブリッドクラウド導入によって、どれだけ企業に効果をもたらすかもわかりにくいのが現状です。自社のITインフラ環境に悩みを抱え、最適なインフラ環境にしたいと検討しているなら、インフラ環境検討の強い味方「IT Modernizationクリニック」で的確な診断を受けることをおすすめします。
「IT Modernizationクリニック」なら、お客様の方向性にあわせたハイブリッドクラウド導入の肝となる、最適なインフラ環境をデザインするサポートが可能です。お客様の自社システムが抱える改善点を洗い出して、どのような改善をすればよいのかを診断します。自社のITインフラ環境改善の第一歩を踏み出すために、ぜひ本ソリューションの利用をご検討ください。