2023年1月、Microsoft社の法人向けOpenAIサービス「Azure OpenAI Service」の一般提供が始まりました。Azure OpenAI Serviceは、ChatGPTやGPT-4をはじめとする多様な生成AIモデルを、Azureのクラウドプラットフォーム上で利用できるサービスです。OpenAIをそのまま利用するよりもセキュリティが高くデータ保護の観点で優れているため、企業や自治体などから注目を集めています。
本記事では、Azure OpenAI Serviceの基礎知識や特長、活用、活用事例をわかりやすく解説します。Azure OpenAI Serviceの導入を検討されている際は、ぜひ参考にしてください。
目次 |
1. Azure OpenAI Serviceとは
Azure OpenAI Serviceは、Microsoft Azureのクラウドプラットフォーム上で提供される、OpenAI社の人工知能(AI)サービスです。OpenAI社が開発したGPT-4やChatGPTなど、自然言語処理モデルを使用できます。
またAzure OpenAI Serviceは、Microsoft社が提供するAzure Cognitive Servicesの一つでもあります。Azure Cognitive Servicesでは、クラウドベースのAIサービスを使ってアプリケーションの開発が可能です。担当者に専門知識がなくても、AIモデルを活用したサービスを容易に構築できる点が特長です。
1-1. Azure OpenAI Serviceの利用料金
Azure OpenAI Serviceでは、従量制の課金モデルと、モデルごとの単価によりコストを最適化しています。言語モデル、画像モデル、モデルの埋め込みの料金は、次のとおりです。
モデルの種類 |
モデルの名称 |
料金 |
言語モデル |
gpt-3.5-turbo |
$0.002(1,000トークン) |
画像モデル |
GPT-4:8K コンテキスト |
$0.03(1,000 トークンのプロンプト) $0.06(1,000トークンのアウトプット) |
GPT-4:32K コンテキスト |
$0.06(1,000トークンのプロンプト) $0.12(1,000トークンのアウトプット) |
|
画像モデル |
Dall-E |
$2(100画像) |
モデルの埋め込み |
Ada |
$0.0001(1,000トークン) |
料金は変更になる可能性があるため、最新情報はこちらのページからご確認ください。
1-2. アクセスには申請が必要で制限されている
2023年7月時点において、Microsoft社の「責任あるAI」という原則を考慮し、AIの悪用や意図しない損害を防ぐため、Azure OpenAI Serviceへのアクセスは制限されています。しかし、申請したからといって必ずしも受領されるわけではありません。
現時点では、同社と関係が構築できているパートナー企業、リスクの低いユースケース、リスクの軽減に配慮した顧客のみが対象となっています。Azure OpenAI Serviceへのアクセスを希望する場合、下記のページから申し込みができます。
Azure OpenAI Service ページ の下方へスクロールし、「Azure OpenAIへのアクセスを申請する」のリンクをクリックしてWebフォームへ入力してください。
1-3. OpenAIとの違い
OpenAIのモデルを使うには、「Azure OpenAI Service」または「OpenAI」を使用する方法があります。OpenAIとAzure OpenAI Serviceは共同開発され、互換性が確保されているため精度に違いはありません。しかし、最新モデルのAPIはOpenAIが先行して公開されます。
2つのサービスの大きな違いは、セキュリティ面です。Azure OpenAI Serviceでは、入力情報がAIのトレーニングに利用されず、Microsoft Azureのセキュリティ機能を使用できます。入力情報がトレーニングに利用される可能性のあるSaaS版のOpenAIよりも、Azure OpenAI Serviceの方が高い機密性を確保できるでしょう。
2. Azure OpenAI Serviceの特長
次に、Azure OpenAI Serviceの3つの特長を紹介します。
2-1. 高いセキュリティで機密情報を保護できる
Azure OpenAI Serviceは、Microsoft Azureの強固なセキュリティで継続的に保護されています。例えば、ID管理やアクセス権の制御、ネットワークのセキュリティ保護、監視、脅威の早期発見などのセキュリティ機能が利用可能です。
機密性が高い開発環境を構築できるので、厳しいセキュリティポリシーを定めた組織からも信頼されています。
2-2. 多様なAIモデルを利用できる
Azure OpenAI Serviceでは多様なAIモデルを活用でき、高度な文章生成や自然言語処理が可能です。具体的には、GPT-4、GPT-3.5、DALL-Eなどです。それぞれの概要は、次のとおりです。
Azure OpenAI Serviceで利用できるAIモデルの例(2023年7月時点) |
|
GPT-4 |
最新の大規模言語モデルで、より高度な文章生成や問題解決ができる。チャット用に最適化されている。 |
GPT-3.5 |
自然言語とコードの理解や生成ができる。GPT-3.5 Turboモデルが、GPT-3.5ファミリー内で最も能力とコストパフォーマンスに優れている。 |
DALL-E |
テキストプロンプトから画像を生成するAIツールで、現在はプレビュー段階。 |
2-3. 導入やスケールアップ・ダウンがスムーズにできる
Azure OpenAI Serviceはクラウドベースであるため、物理的なオンプレミスサーバが必要なく、導入がスムーズです。また、スケーラビリティに優れている点も、クラウドサービスの特長です。必要に応じて業務アプリケーションやデータベースを増加でき、規模を縮小する際は保存容量を容易に削減できるため、スケールアップ・ダウンに対応しやすいでしょう。
3. Azure OpenAI Serviceの活用方法
Azure OpenAI Serviceの具体的な活用方法を紹介します。
3-1. AIチャットで業務の悩みを迅速に解決
社内のコミュニケーションツールやデータベースと連携することで、AIチャットが利用でき、業務上の悩みを迅速に解決できます。従業員がチャットで業務上の質問を投げかけると、AIがマニュアルや社内規定などにアクセスして回答する仕組みです。
例えば、情報システム部門への問い合わせをAIチャットにするなどが挙げられます。FAQなど蓄積されたナレッジから一次回答が提供され、情報システム部門の業務効率化を実現できます。
問い合わせ対応だけでなく、文章の要約や翻訳、議事録の作成にもAIチャットで対応可能です。AIチャットに指示を出すと文章が自動作成されるので、業務工数の削減につながります。
3-2. データ分析でマーケティングを強化
Azure OpenAI Serviceを活用し、データ分析を自動で実行してマーケティング施策に反映する方法もあります。市場調査の結果や業務データなどをアップロードして、分析方法や対象範囲を指示することで、定量分析や頻出単語の抽出などができます。
Azure OpenAI Serviceなら機密情報の保護に優れているため、安全に利用可能です。分析内容をレポート化して活用すれば、PDCAを迅速に回せるでしょう。
4.まとめ
Azure OpenAI Serviceを導入することで、安全な環境で最新のAIモデルを活用したサービスを構築できるようになります。また、クラウドベースのサービスであるため拡張性があり、事業の変化に応じて柔軟に容量の増減などができます。
しかし、Azure OpenAI Serviceの登場によって、以前よりもAIモデルを容易に活用できるようになったとはいえ、Microsoft Azureの運用には専門知識が必要です。JBCCでは、「EcoOneサービス」を通じてMicrosoft Azureの設計から運用までサポートしています。クラウドをベースとした社内環境の構築にご関心がありましたら、お気軽にお問合せください。
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