クラウドシフトとは?おすすめの移行先 Microsoft 365 や移行手順を解説

- クラウドシフトの基本的な意味と、注目されている理由
- クラウドシフトを導入する具体的なメリットと、成功に導くためのステップ
- クラウドシフトの第一歩として Microsoft 365 が最適な理由
多くの企業がDX推進のために取り組んでいる「クラウドシフト」。しかし、実際に取り組もうとすると「どこから着手すべきか?」「ID管理やセキュリティが複雑化しそう」といった課題に直面するケースも少なくありません。
そこで突破口となるのが、多くの企業が常日頃から利用している「Microsoft 365」です。
本記事では、クラウドシフトの基本から、企業がつまずきがちな注意点を詳しく解説します。Microsoft 365 が課題解決の「最適解」となり得る理由についても解説しますので、最後までご覧ください。
クラウドシフトとは

クラウドシフト(Cloud Shift)とは、システムやアプリケーションなどのIT資産をオンプレミス環境からクラウド環境へ移行する取り組みのことを指します。単なる場所の移動ではなく、業務やシステムの在り方を見直し、クラウドに最適化された形で再構築・再設計するのが大きな特徴です。
具体的には、既存の仕組みの改修、クラウドに合わせたシステムの再設計などを実施します。こうした取り組みを通じ、ビジネスの変化に対応できる柔軟なIT基盤を構築できます。
クラウドリフトとの違い
クラウドシフトと似た言葉に、クラウドリフト(Cloud Lift)があります。クラウドリフト(Cloud Lift)とは、オンプレミス環境で構築した業務システムやアプリケーションを、構成を変えずにそのままクラウドへ移行する手法です。
クラウドリフトとクラウドシフトの主な違いは、移行時にシステムやアプリケーションを再設計するかどうかにあります。
クラウドリフトが既存のシステムをそのままクラウドに移行するのに対し、クラウドシフトはクラウド環境に合わせてシステムやアプリケーションを再設計します。以下に、クラウドリフトとクラウドシフトの違いをまとめました。
クラウドリフト | クラウドシフト | |
---|---|---|
概要 | 既存システムをほぼそのままクラウドに移行 | クラウドに最適化する形で再設計・再構築して移行 |
工数 | 比較的少ない(短期間で導入可能) | 多い(要件整理・設計・開発などが必要) |
コスト | 抑えやすい | 高くなりやすい |
クラウドシフトが注目されている背景

近年、企業を取り巻くビジネス環境は大きく変化しており、特に下記のような理由からクラウドシフトが注目されています。
-
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進
ITを活用してビジネスを変革するDXは、企業の競争力維持に不可欠です。柔軟にシステムを構築・改修できるクラウド環境は、このDXを実現するための土台となるIT基盤といえます。 -
レガシーシステムからの脱却
古いシステムの保守運用は、コストや手間の面で大きな負担となります。クラウドシフトによって、老朽化したシステムを刷新できます。 -
BCP対策
クラウドを活用することで、データの冗長化や迅速な復旧が可能になります。災害やシステム障害の影響を最小限に抑えることで、事業継続力が強化されます。 -
多様な働き方への対応
テレワークの実現には、場所を選ばず安全に働ける環境が欠かせません。クラウドは、こうした多様な働き方を支えるインフラとして機能します。
クラウドシフトのメリット

クラウドシフトを実施することで、企業はさまざまなメリットを得られます。主なメリットは下記の4つです。
- コストを削減できる
- 運用管理の負担を軽減できる
- スケーラビリティの向上につながる
- セキュリティレベルを高められる
それぞれのメリットについて解説します。
コストを削減できる
クラウドシフトは、初期費用と運用費用の両面でコストを削減します。
まず、自社で物理的なサーバーなどを購入する必要がなくなります。そのため、高額なハードウェア購入費といった初期投資が不要になるのです。
また、システムの保守やトラブル対応といったハードウェア管理をベンダーに任せられます。これにより、これまで運用にかかっていた保守要員の人件費などの運用コストも削減可能です。くわえて、クラウドシフトでは業務に合わせてシステムを改修するため、管理業務の効率化も図れます。結果として、間接的な人件費の圧縮にもつながります。
このように、クラウドシフトはITコスト全体を最適化し、長期的な削減を実現できるのです。
運用管理の負担を軽減できる
クラウドシフトは、IT部門の運用管理の負担を大幅に軽減します。
クラウドシフトを実施することで、インフラの監視やバックアップ、障害対応などをクラウドベンダーに任せられます。業務負担を軽減し、限られたリソースをより戦略的な業務へ割くことも可能です。
また、リソースに余裕が生まれることで、トラブル発生時の対応速度も向上します。結果として、IT部門の負担軽減だけでなく、企業全体の生産性向上にもつながるでしょう。
スケーラビリティの向上につながる
ビジネスの成長に柔軟に対応できる、高いスケーラビリティ(拡張性)もクラウドシフトの大きなメリットです。
クラウド環境では、CPUやメモリ、ストレージなどのリソースを必要に応じて柔軟に拡張・縮小できます。キャンペーン実施時や繁忙期などで急激にアクセスが増加した場合でも、即座にリソースを増強することで安定したサービスを提供することが可能です。
また、事業拡大や新規サービスの立ち上げに際しても、スピーディーにIT環境を構築できます。オンプレミスのように、将来を見越した高価な物理サーバーの購入や、機器の入れ替えに時間を費やす必要はありません。
市場の変化が激しい現代において、ビジネスチャンスを逃さない俊敏なIT基盤を実現します。
セキュリティレベルを高められる
セキュリティレベルを高められる点もクラウドシフトの大きなメリットです。多くのクラウドサービスプロバイダーは、最新の暗号化技術やアクセス制御、脆弱性管理、24時間体制の監視など、高度なセキュリティ機能を標準で提供しています。
クラウドへ移行することで、こうした専門的なセキュリティ対策を利用できます。専門人材を自社で抱えることなく、企業の重要なデータやシステムを脅威から守ることが可能です。
クラウドシフトの進め方

クラウドシフトを成功させるには、入念な計画のもとで着実に進めることが大切です。一般的には、クラウドシフトは下記の流れで進めます。
- IT環境の課題を洗い出す
- 移行計画を策定する
- クラウドサービスを選定する
- 移行作業を進める
- 運用を開始し、継続的にモニタリングする
それぞれのポイントを見ていきましょう。
IT環境の課題を洗い出す
現在使用しているハードウェアやソフトウェア、ネットワーク構成、データの保管場所などをすべて整理し、可視化します。
その上で、既存システムのパフォーマンスや可用性、セキュリティ要件などを分析し、「システムの維持コストが想定以上に高い」「特定の業務で処理速度が遅延している」といった、コスト面やパフォーマンス面の具体的な課題を明らかにしましょう。
これらの分析結果をもとに、クラウドシフトが技術的・業務的に実現できるか、またコストや合理性の観点から妥当かどうかを判断します。このフェーズでの詳細な分析が、プロジェクト全体の方向性を決定づけます。
移行計画を策定する
現状分析と課題の洗い出しが完了したら、具体的な移行計画を作成します。どのシステムから優先的に移行するか、システムのダウンタイムをいかに最小限に抑えるか、テストや検証をどう進めるかなどを具体的に設計します。
また、プロジェクトを円滑に進めるためには、関係者一人ひとりの役割分担と責任範囲を明確に定義することが不可欠です。関係者全員がスケジュールや作業内容を正しく共有できる体制を整えれば、移行中の混乱やトラブルを未然に防げます。
加えて、想定外の事態に備えて、事前にリスクを洗い出し、その対処法を整理しておきましょう。
クラウドサービスを選定する
移行計画の策定と並行して、自社のニーズに最適なクラウドサービスを選定します。下記のポイントを比較するのがおすすめです。
- 必要な機能
- 料金プラン
- 運用サポートの有無
- 既存システムとの互換性
- セキュリティ基準
- 業界の導入実績
これらの点は、公式サイトの情報だけで判断するのではなく、提供元の企業に直接問い合わせたり、商談の場を活用したりして確認することが大切です。その際に自社のシステム状況や課題を具体的に伝えることで、より的確な提案やアドバイスを受けられるでしょう。
移行作業を進める
選定したサービスと計画に基づき、実際の移行作業を進めましょう。具体的には下記の作業を実施していきます。
- データのバックアップ取得
- クラウド環境の構築
- アプリケーションやデータの移行
- 動作確認
これらの作業をいきなりすべてのシステムで実施するのは非常に危険です。そのため、影響の少ない小規模なシステムから段階的に移行する「スモールスタート」を心がけましょう。この進め方であれば、初期段階で発生しうる問題を事前に特定し、本格的な移行が始まる前に対策を講じられます。
また、万が一トラブルが発生した場合に備えて、ロールバック手順や復旧フローを事前に準備することも非常に重要です。こうした慎重な手順が、安全で確実な移行を実現します。
運用を開始し、継続的にモニタリングする
すべての移行作業が完了した後は、本格的な運用フェーズへと移行します。運用開始後も、クラウド環境のパフォーマンスや稼働状況を定期的にモニタリングしましょう。セキュリティパッチの適用やリソース使用量の最適化、バックアップの確認などを継続的に実施します。
さらに、ビジネスの変化に合わせてシステムを改善し続ける視点も不可欠です。たとえば、新たな脅威に対応するためのセキュリティパッチ適用や、組織変更に伴う障害発生時の手順見直しなどが挙げられます。こうした地道な改善活動を続けることで、クラウド環境をビジネスに最適化し、価値を高めることができるのです。
クラウドシフトを進める上での注意点

クラウドシフトには多くのメリットがある一方で、成功させるためにはいくつかの注意点を理解する必要があります。特に押さえておきたいのが、下記の3つです。
- 専門的な知識を持つ人材の確保が必要
- 一時的にコストと工数が増加する
- ID管理とセキュリティが複雑化する
計画段階でこれらの課題を把握し、対策を講じることで「こんなはずじゃなかった」という失敗を防ぐカギとなります。それぞれの注意点を詳しく解説します。
専門的な知識を持つ人材の確保が必要
クラウド環境の設計・構築・運用には、オンプレミスとは異なる専門知識が求められます。たとえば、下記のような知識が必要です。
- クラウドネイティブな設計思想
- 各クラウドベンダー特有のサービス仕様
- セキュリティ設計
専門の人材がいない状態でプロジェクトをはじめると、予算を超過したり、セキュリティインシデントのリスクが高まったりする恐れがあります
とはいえ、社内で一から人材を育成するには時間がかかります。そのような場合は、専門的な知見を持つ外部のパートナー企業と協力することも有効な選択肢です。
一時的にコストと工数が増加する
クラウドシフトは、長期的にはコスト削減や効率化が期待できる一方で、移行プロジェクト自体には相応の初期投資が必要です。たとえば、コンサルティング費用やクラウド環境の構築費、データ移行費などが発生します。
特にクラウドシフトは既存システムを改修するため、単純な移行よりもコストと期間が大きくなる傾向があります。現行システムの調査や計画策定、テストなどにも多くの工数がかかるため、十分な予算とスケジュールを確保することが重要です。
ID管理とセキュリティが複雑化する
クラウドサービスの利用範囲が拡大すると、サービスごとにユーザーIDやパスワードが分散し、ID管理が煩雑になりがちです。また、各サービスに応じたセキュリティポリシーやアクセス権限の設計・運用も必要となるため、セキュリティ管理の負担が大きくなってしまいます。
もし管理負担が担当部門の許容量を超えてしまうと、作業の漏れや設定ミスが原因で情報漏えいなどのセキュリティ事故につながる恐れがあります。
そのため、管理負担を最小限に抑える仕組み作りが重要です。たとえば、シングルサインオン(SSO)やIDaaS(ID管理サービス)を導入し、ID・アクセス管理の統合を図ることが効果的です。こうした管理基盤を整えることで、管理者側の運用負荷の軽減とユーザーの利便性向上を同時に実現できます。
クラウドシフトの第一歩に Microsoft 365 が適している理由
クラウドシフトは、企業のIT基盤や業務プロセスを根本から見直し、クラウド環境に最適化する大きな取り組みです。そのため、「何から着手すべきか分からない」と戸惑う企業も少なくありません。
クラウドシフトの最初の一歩としておすすめなのが「Microsoft 365」です。Microsoft 365 がおすすめな理由は大きく分けて下記の4点です。
- 使い慣れたOfficeアプリからスムーズに移行できる
- 複雑なID管理とセキュリティを一つに集約
- マルチデバイス対応で柔軟な働き方を実現できる
- 導入・運用支援サービスが豊富で運用管理の負担を軽減できる
それぞれ解説していきます。
使い慣れたOfficeアプリからスムーズに移行できる
Microsoft 365 は、Word やExcel、PowerPoint など、多くの従業員が使い慣れたOfficeアプリケーションをクラウド上で利用できるサービスです。操作性が従来のデスクトップ版とほとんど変わらないため、導入時の説明会や研修にかかる工数を最小限に抑えられます。
「操作方法がわからない」「ファイルが開けなくなった」といった移行に伴う混乱が起きにくく、スムーズな導入が実現します。
これまでと使用感が大きく異なるアプリケーションを導入すると、現場の学習コストが大きくなり、反発を招くことも少なくありません。Microsoft 365 であれば、従業員はこれまでと同じ感覚でアプリケーションを利用できるため、全社的な協力も得やすいでしょう。
複雑なID管理とセキュリティを一つに集約
業務で利用するクラウドサービスが増えるほど、IDやパスワードの管理は煩雑になります。Microsoft 365 では、ID管理基盤であるMicrosoft Entra ID(旧Azure AD)を活用して、ID管理を一元化できます。
これによって、一つのIDとパスワードで複数のサービスにログインできる「シングルサインオン(SSO)」が実現。従業員はサービスごとに何度もログインする手間から解放され、利便性が大きく向上します。
さらに、IDとパスワードに加えて、スマートフォンへの確認コードなどで本人確認を行う「多要素認証(MFA)」も容易に導入できます。不正ログインのリスクを大幅に低減し、企業が定めるセキュリティポリシーの徹底にもつながるのです。
マルチデバイス対応で柔軟な働き方を実現できる
Microsoft 365 はマルチデバイスに対応しており、パソコンはもちろん、タブレットやスマートフォンなど、さまざまなデバイスからアクセスできます。オフィス、外出先、自宅など、場所を問わずいつでも同じ環境で業務に取り組めるため、テレワークやハイブリッドワークといった柔軟な働き方を力強く後押しします。
さらに、クラウド上で複数人が同時に一つのファイルを編集できる「リアルタイム共同編集」機能も搭載している点も特長です。チーム内での情報共有や意思決定のスピードを高め、組織全体の生産性向上に大きく貢献します。
導入・運用支援サービスが豊富で運用管理の負担を軽減できる
Microsoft 365 は、導入や運用に関するサポート体制が充実している点も、クラウドシフトの第一歩としておすすめできる大きな理由です。
世界中で圧倒的なシェアを誇るため、公式サポートはもちろん、導入・運用を支援する専門のパートナー企業が数多く存在します。これは、クラウドの専門知識を持つ担当者が社内にいない、あるいはリソースが限られている企業にとって、非常に心強いメリットといえるでしょう。
JBCCでは、こうした公式サポートに加えて、お客様が Microsoft 365 を最大限に活用し、社内に定着させるための独自の支援を提供しています。たとえば、基本的な使い方から応用的な活用法までを体験できるワークショップを随時開催しています。
さらに、導入後もお客様が自走できるよう、定期的なサポートを無償で実施し、現場での利用を促進します。このように、専門家の手厚い支援を受けながら、安心してクラウドシフトの第一歩を踏み出すことが可能です。

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クラウドシフトQ&A
ここでは、クラウドシフトに関するよくある質問と回答をご紹介します。
- Q1. 今使っているシステムやデータは、そのままクラウドに移行できますか?
- A. 多くのシステムは移行可能ですが、一部手直しが必要な場合もあります。特に、長年利用している独自の社内システムなどは、クラウド環境に合わせて調整が必要です。事前に専門家によるアセスメントを受け、移行方法や費用、期間を明確にすることをおすすめします。
- Q2. クラウドにすると、セキュリティが脆弱になりませんか?
- A. 多くの場合、自社で対策するより安全になります。Microsoft 365のような主要なクラウドサービスは、セキュリティ専門の技術者が24時間365日体制で監視・運用を行っています。世界基準の最新のセキュリティ対策が常に適用されるため、安心して利用可能です。
- Q3. クラウドシフトには、どのくらいの費用と期間がかかりますか?
- A. 移行するシステムの規模や複雑さによって大きく異なります。メールやファイル共有など、一部の機能から小さく始める「スモールスタート」であれば、コストを抑え、数週間から数ヶ月で完了することも可能です。まずは専門家へ相談し、自社に合った計画を立てましょう。
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クラウドシフトは、単なるシステム移行ではなく、業務プロセスの見直しやIT戦略の転換を含む、企業変革の第一歩となる重要な取り組みです。そのため、最初の一歩は、慎重かつ確実なプラットフォームの選定が重要になります。
Microsoft 365 は、マルチデバイス対応で高度なセキュリティ機能を備えているため、クラウドシフトの最初のステップとしておすすめです。業務で使い慣れた Office アプリをそのまま活用できるため、従業員への負担も少なく、スムーズな導入が期待できます。
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