電子カルテで忙しい医療現場を効率化!メリット・デメリットや2025年開始の電子カルテ情報共有サービスも解説
医療現場の人材不足を解決するため、近年厚生労働省は医療DXを推進しています。医療DXの基本となるのが「電子カルテ」です。電子カルテはカルテをデータ化したもので、事務作業の効率化やミスの低減などが期待できるツールです。また2025年には「電子カルテ情報共有サービス」が開始予定となっており、参画するには電子カルテの導入が必須となっています。
本記事では、電子カルテのメリットやデメリットのほか、機能や導入のポイント、電子カルテ共有サービスについてご紹介します。

電子カルテとは
電子カルテとは、患者情報や診療記録を記載したカルテを電子化したものです。従来のように紙での管理が必要なく、画像データや紹介状などを一元管理できます。中には会計システムや薬剤システムと連携可能なものもあり、業務の効率化や医療ミスの低減などが期待できます。
厚生労働省の「医療施設調査」によると、令和5年の電子カルテシステムの普及状況は、一般病院で65.6%、一般診療所で55.0 %。一般病院の中でも400床以上の病院では9割以上が導入していますが、200床未満の病院の導入率は59%と、半数程度の導入に留まっています。
厚生労働省は近年、マイナ保険証やオンライン資格確認等システムなど、医療DXの動きを加速させています。2025年には、電子カルテ情報共有サービスが開始予定で、利用には電子カルテの導入が必須です。
電子カルテの種類
電子カルテには「オンプレミス型」と「クラウド型」があります。
オンプレミス型は、自院内にサーバーを置いて、独自のシステムを構築します。自由度が高く、カスタマイズ性に優れていることが特徴です。外部ネットワークと切り離されているため、セキュリティリスクも低いとされています。
ただし、構築には多大な時間とお金が必要なため、大規模病院向けと言えます。
一方、クラウド型はベンダーが提供する電子カルテシステムを利用します。小規模病院や診療所向けが多いですが、中規模病院向けも増えてきています。サーバーメンテナンスやシステム更改の手間がなくなるため、IT人材不足の病院でも採用しやすいことが特徴です。オンプレミス型と比較して導入や更新のコストが大幅に少なく、月額利用料は基本的に固定。そのため、経営計画が立てやすいこともメリットと言えます。
なお、オンプレミス型とクラウド型を併せた「ハイブリッド型」もあります。
電子カルテのメリット・デメリット
電子カルテを導入すると、業務効率が上がったり、医療ミスを低減したりといったメリットがあります。一方で、専門知識やセキュリティへの配慮が必要などのデメリットもあるため、注意が必要です。ここでは電子カルテのメリットとデメリットをご紹介します。
【メリット1】業務効率の上昇
電子カルテを導入すると業務効率が上昇します。
紙のカルテの場合「他のスタッフが閲覧している間は閲覧や記入ができない」「カルテを探す時間が必要」「情報の共有に時間がかかる」などの問題がありました。
電子カルテは複数の端末から閲覧でき、IDや氏名などで瞬時に検索が可能です。また画像データや診療情報なども、入力・保存した瞬間にスタッフ間で共有できます。
加えて、定型文の登録や各種システムとの連携も可能。文書作成の時間短縮や、会計・薬剤システムなどと連携することで、よりスピーディな診療ができるでしょう。
【メリット2】医療ミスのリスクを低減
電子カルテは医療ミスのリスクを低減できます。
紙カルテでは、情報を手書きするため、読み間違いや書き間違いによって医療ミスにつながる可能性があります。
電子カルテでは、タブレットやパソコンで記載するため、文字が判別しやすくなっています。判読ミスや転記ミスなどが減ることで、的確に指示を出せるでしょう。
また患者の禁忌情報を登録しておくことにより、投薬などの際にアラートを発して警告する機能もあります。
【メリット3】保存スペースが不要
電子カルテは保存スペースが不要です。
紙カルテの場合、患者が増えればカルテが増え、保管や検索がしにくくなります。場合によっては保管のために場所を借りる必要があるでしょう。
一方、電子カルテはサーバー内に情報が保管されるため、保管場所は要りません。クラウド型の場合はサーバーも不要。引越しや災害の際も、カルテを移動させる必要がありません。
紙カルテも電子カルテも診療が完了してから5年間の保管が必要です。しかし実際には、裁判を想定して20年以上保管をしておくことが良いとされているため、保存スペースが必要ないことは大きなメリットになるでしょう。
【デメリット1】ITの専門知識や費用が必要
電子カルテを導入するには、ITの専門知識や費用が必要です。
電子カルテではメンテナンスやトラブル対応をする必要があります。しかし、ITの専門知識がない人材が行うことは難しく、外部に依頼したり、人材を雇用したりしなければなりません。
これらの人件費等に加え、電子カルテの構築費用や利用料などもかかります。またスタッフが電子カルテの操作に慣れるまでは、一時的に業務効率が落ちる可能性もあります。
もしコストを抑えたいのなら、クラウド型を採用すると良いでしょう。クラウド型はサーバーの保守管理やメンテナンスなどをベンダーが行うため、特別なIT知識は不要です。
【デメリット2】セキュリティリスクがある
電子カルテではセキュリティリスクにも配慮する必要があります。
マイクロトレンド社の調査によると、2023年の医療機関へのマルウェア検出は22万8100で、政府機関に次いで多くなっています。医療機関は扱う情報の秘匿性が高く、情報が高額で売買されることや、セキュリティの甘さ、身代金を支払える資金力があることから悪意のあるユーザーに狙われやすいと言われています。
厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」でも「医療情報システムに対して求められる安全管理は、一般の情報システムに求められる安全管理よりも高い水準で行われることが求められる」とされており、ゼロトラスト思考でのセキュリティ対策が必要とされています。
【デメリット3】機器故障や停電による影響が大きい
電子カルテは機器故障や停電による影響が大きいこともデメリットです。
タブレットやパソコンから閲覧や操作を行う電子カルテでは、機器が故障したり停電したりすると利用できなくなる可能性があります。電子カルテが利用できない場合、紙のカルテで対応することになるため、業務効率が落ちて受入できる患者数が減少するでしょう。
実際に電子カルテのシステムダウンを経験した病院では、診療に時間がかかることを患者へ説明したり、救急を断ったりせざるを得なかったという事例があります。会計はすべて後日になり、投薬の指示も難しかったようです。
機器故障や停電に備えてバックアップをとっておく、ベンダーにシステムダウン時の対応を確認するなど、事前の対策が大切です。紙カルテに備えて訓練もしておきましょう。
電子カルテの導入方法

電子カルテを導入するには、まず現場の状況を把握し、電子カルテを比較検討してから自院に合ったものを選ぶ必要があります。ここからは電子カルテの導入手順をご説明します。
(1)電子カルテの絞り込み
まずは利用検討をする電子カルテを絞り込みましょう。機能や利用にかかるコスト、連携、サポート体制などさまざまな点を考慮して、別メーカーのものを3社くらいに絞るのが理想です。
(2)現場の把握・要件確認
検討する電子カルテを絞り込んだら、現場の状況を把握し、要件を確認します。絞り込んだ電子カルテのベンダーに連絡をとり、打ち合わせをして要件を詰めていきましょう。現在医療機関が抱えている課題や、電子カルテの導入によって実現したいことなどを正確に伝えることが重要です。
同時にベンダーからデモ画面などを見せてもらい、電子カルテの操作性や外部システムの連携なども確認しておきましょう。
(3)電子カルテの選定
要件を整理したら、実際に利用する電子カルテを決定します。
電子カルテの選定の際は、ベンダーの対応力も判断材料にしましょう。トラブルの際に適切な対処をしてくれるかは、電子カルテの運用で非常に重要です。対応に誠意があるか、対応のスピードは適切か、確認しましょう。電子カルテを利用中の病院に見学を依頼してみるのも良いかもしれません。
(4)稼働準備
電子カルテを選定したら、導入の前準備を行います。
まず現行業務の棚卸を行い、ベンダーと共に電子カルテを導入した場合の運用フローを検討しましょう。
その後、マスタの設定と操作方法を習得します。マスタの設定の際には、設定に必要な項目をベンダーに聞いて準備しておきましょう。利用する頻度が多くなることが予想される病名や処方などは、先に整理しておくと準備が楽になります。
導入の1~2ヶ月前になったら、利用する医師やスタッフ向けに、操作方法の研修会を行います。実際に利用することで見えてくる問題点もあるでしょう。導入前にリハーサルを行い、実際に利用して課題を見つけておきましょう。リハーサルの結果で稼働予定日に稼働するか決定します。
(5)稼働
問題がなければ、実際に稼働となります。
稼働時はトラブルが発生する可能性が高いため、ベンダーが立ち会ってくれることもあります。最初はベンダーのサポートを受けつつ対応し、徐々にベンダーなしでの稼働に移行していきましょう。
(6)保守・管理
稼働後も電子カルテの保守管理を行う必要があります。不明な点やトラブル対応については、ベンダーに問い合わせて対応しましょう。
電子カルテ導入のポイント
電子カルテ導入時は、自院に合った電子カルテか、必要なサポートや機能があるかを確認することが大切です。また導入はベンダー任せではなく、自院が中心となって行いましょう。ここでは電子カルテ導入のポイントをご紹介します。
自院にあった電子カルテを選定する
電子カルテは自院にあったものを選定しましょう。医療機関の規模や診療科によって選ぶべき電子カルテは違ってきます。
たとえば病床数が多い大規模病院ではスタッフや部門が多いため、システムの連携や共有がしやすい電子カルテが向いています。一方で外来専門の診療所などでは、自院が対応できる診療科に適した機能がある電子カルテが良いでしょう。
電子カルテの導入には、初期費用や利用料、タブレットやパソコンなどの機器も購入する必要があります。自院が無理なく支払えるコストか確認しましょう。
医療機関が主体となって導入を進める
電子カルテ導入は医療機関が主体となって進めることが大切です。ベンダーに任せきりになると、医療機関の課題や目的が正確に伝わらず、自院の意図しない電子カルテになる可能性があります。
打ち合わせや稼働前の準備などには積極的に参加して、自院の実現したいことをしっかり伝えましょう。
機能やサポートを確認する
電子カルテ導入の際には、機能やサポート体制の確認を行いましょう。
電子カルテにはテンプレート入力や音声入力などの便利な機能が搭載されているものや、診療科に適した特殊な機能が採用されているものなどがあります。連携機能がある場合には、連携できるシステムの確認をしましょう。
またサポート体制も確認が必要です。先述したように、電子カルテはシステムダウンすることで非常に大きな影響があります。場合によっては患者の生命にかかわることもあるため、トラブル時のサポート体制については十分に確認することが大切です。
加えて、利用速度に問題はないか、操作は直感的かも、テストやデモで確認しましょう。
2025年始動予定の「電子カルテ情報共有サービス」について
電子カルテ情報共有サービスは、全国の医療機関や薬局などで電子カルテを共有するサービスです。患者の診療情報などを電子化して共有することで、より効率的で高品質な医療提供が可能になります。加えて、電子化によるコスト削減も期待できます。
また、患者自身が自分の診療記録などを閲覧することも可能。患者自身の意識的な健康維持への貢献ができるとされています。
患者が電子カルテ情報共有サービスを利用する条件は、診療先である医療機関がサービスに登録していることです。そのため、電子カルテ情報共有サービスに登録していると、自身の診療情報を閲覧したい患者から診療先として選ばれる可能性があります。
2025年3月時点では実装に至っていませんが、2025年2月には愛知県でモデル事業を開始。他にも、山形や静岡の医療機関、計10か所でモデル事業の実施が予定されています。
電子カルテ情報共有サービスの3つのサービス
電子カルテ共有サービスでは、現状下記3つのサービスを提供する予定となっています。
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紹介状送付サービス
診療記録を含めた紹介状を、共有サービスを通じて送信できるサービスです。紹介先の医療機関は即座に紹介状を確認でき、患者による持参忘れや郵送・手渡しによるコストやタイムロスもありません。 -
健診文書閲覧サービス
電子化された健診結果を、医療機関や事業者(保険者)、本人が閲覧できるサービスです。
医療機関を受診する際、患者が健診結果を持参する必要がありません。また保険者を経由せずに登録されたデータを閲覧できるため、本人が迅速に自身の健康状態を把握し、受診できます。 -
6情報閲覧サービス
患者にかかわる6つの情報(傷病名・アレルギー・薬剤禁忌・感染症・検査・処方)を医療機関や本人が閲覧できるサービスです。医療機関が患者について詳細な情報を正確に得られるため、問診や診療、服薬指導の質が上昇します。
電子カルテ情報共有サービスに必要な医療機関の対応
2025年3月現在、電子カルテ情報共有サービスは実装されていないため、具体的な手続きは公表されていません。ただし利用には下記が前提とされているため、登録を考えている場合は準備をしておくと良いでしょう。
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電子カルテの導入
電子カルテ情報共有サービスは、電子カルテに記載された情報を共有するサービスのため、電子カルテの導入が不可欠です。
なお、電子カルテを共有するにあたり、厚生労働省は電子カルテの規格を定めています。国際標準規格の「HL7 FHIR」を採用しており、これが搭載された電子カルテを選ぶ必要があります。 -
オンライン資格確認の導入
電子カルテ情報共有サービスでは、事前にオンライン資格確認を導入しておく必要があります。
オンライン資格確認とは、マイナンバーカードや健康保険証で、患者の資格情報等がわかるサービスです。医療機関では2023年5月から原則義務化となっています。
オンライン資格確認の運用開始までには約3ヶ月を要するため、早めに対応しましょう。
電子カルテ情報共有サービスの補助金
電子カルテ情報共有サービスの導入では補助金の利用が可能です。
健診を実施している医療機関の場合、大規模病院(200床以上)は657万9,000円、中小規模病院(20床~199床)は545万7,000円を上限として補助が受けられます。健診を実施していない医療機関の場合、大規模病院は508万1,000円、中小規模病院は408万5,000円が上限です。いずれも補助率は2分の1です。
利用条件は、オンライン資格確認等システムと電子処方箋管理サービスを導入した上で、電子カルテ情報共有サービスに登録できる環境が整っていることです。
詳しい条件等は下記をご覧ください。
まとめ
電子カルテを導入することで、医療現場の効率上昇につながります。電子カルテ情報共有サービスは2025年開始予定となっているため、サービスへの登録を考えている場合は、早めに準備を行いましょう。
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クラウドカルテ「blanc」(ブラン)は、『いつでも・どこでも・だれでも』をコンセプトにした電子カルテシステムです。オンプレミスの電子カルテ「Ecru」の機能はそのままに、より使いやすいレイアウトとなりました。
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