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マルチクラウドとハイブリッドクラウドの違いとは。課題と運用事例

公開日 : 2019年08月09日
更新日 : 2024年07月22日

マルチクラウドとハイブリッドクラウドの違いとは。課題と運用事例

大手企業がマルチクラウド環境に対応できるシステムを発表するなどのニュースをきっかけに、社内でマルチクラウド化を検討しています。

しかし、マルチクラウドという言葉自体がどんな意味をもつのかわからない、移行するにあたって問題が発生すると感じていてなかなか移行に踏み切ることができない、といった企業もあるかもしれません。

ここではマルチクラウドとはどのようなものか、マルチクラウドのメリットやデメリット、導入時の注意点などについて解説します。

マルチクラウドとは

マルチクラウドとは、インターネットを通じてアクセスし、データを利用するクラウドシステムを、複数組み合わせて利用することを意味します。クラウドシステムサービスにはそれぞれにメリットやデメリットがあるため、それぞれのクラウドシステムを使い分けることにより、利便性を高めることができます。

また、マルチクラウドはデータ通信量の分散にもつながります。一般消費者へサービスを提供している会社であれば、アクセス先のサーバーを別のクラウドサービスにすることで、顧客が利用するアプリからの接続によって、プロジェクトを進めるためのデータが重くなってしまうということもありません。

しかしその反面、複数企業のクラウドシステムを利用することによりコストが高くなる、あるいは管理やシステム開発に負担がかかるといった可能性があることに注意しなければいけません。

マルチクラウドのメリット・デメリット

マルチクラウドのメリットとデメリットをまとめると、下記になります。

マルチクラウドのメリット

・各サービスのよい点のみが使えて作業効率が上がる
・クラウドサービスでデータ消失があってもリスクを分散できる
・1社のサービスに依存せず柔軟に対応できるようになる
・アクセスが一箇所に集中せずに負担が軽くなる

デメリット

・利用方法が異なるため管理や利用方法を覚える手間が増える
・コストが高くなることがある
・セキュリティリスクが高くなる

ハイブリッドクラウドとの違い

マルチクラウドと間違いやすいものとしてハイブリッドクラウドという言葉がありますが、ふたつが指す言葉の意味は異なります。ハイブリッドクラウドは、他社のクラウドサービスだけでなくオンプレミスなどとも呼ばれる自社で用意するサーバーを合わせて活用し、それぞれのデータに接点をもたせている状態のことです。

ハイブリッドクラウドを導入している企業では、データの種類や用途、アクセスの分散化などの目的に合わせてオンプレミスとクラウドを使い分けています。

マルチクラウドの課題

どんな企業でもすべてマルチクラウドにすればよいとは限りません。現在ひとつのクラウドサービスを利用している企業が複数のクラウドサービスへ移行する際に課題として考えておくべき点として、セキュリティと運用が複雑化することがあります。

セキュリティへの不安

データの保管場所を分散することは、万が一クラウドサービスに保管されているデータが消失した場合のリスクを減らすことができますが、セキュリティ上のリスクは高くなってしまいます。複数の場所にデータを保管することで、流出する可能性が上がってしまうためです。一方で、サービスが一箇所の場合は、集中的にセキュリティ対策を施すことで安全性を高めることができますが、不正アクセスされた場合のリスクも高くなります。クラウドサービス自体にデータのアクセス状況を確認するシステムがあっても、利用しているクラウドすべてを監視する必要があるでしょう。サービスログインに必要なIDやPWの流出や個人利用しているパソコンからのアクセスなどクラウドサービスを利用することのセキュリティリスクが増大することが避けられません。

運用の煩雑化

クラウドサービスを使用する際にIDやPWを使ってログインする方式であった場合、利用しているサービスの数が多ければ多いほどIDとPWを用意しなければいけず、管理も必要となります。すべてを同じものにすることはセキュリティ上で問題があるとはいえ、いくつもの種類があると利用者が混乱してしまい、管理している担当者の手間も増えることになります。

また、クラウドのインターフェイスもサービスごとにそれぞれ異なります。利用方法の周知や新入社員への研修では、教育に多くの時間を増やさなければいけません。慣れた方でもAの作業はAのクラウドにあり、Bの作業はBのクラウド...という形式であれば混乱してしまうこともあるでしょう。クラウドサービスのシステムがアップデートされた、あるいは新しい機能が増えた場合などにも、同様のことがいえます。

部門ごとで分ければ問題ないと考えることもあるかもしれませんが、複数部署をまたぐ管理部門や社内システム開発担当者にとっては負担が増えることに変わりありません。

運用管理をして効率的な運用を

課題を考慮した場合、マルチクラウドを活用するには一見、面倒が多く、リスクが高いように感じてしまうかもしれません。実際に導入を検討したものの、リスクなどの面から実現には至らなかったという経験をもつ方もいるのではないでしょうか。

マルチクラウドの課題をクリアするためには、運用管理を簡潔にすることが必要となります。管理データの機密性や業務内容などによってクラウドサービスを使い分けるが、クラウドとの通信を監視・制御し、クラウド全体を一元管理する基盤を構築する、といった観点で運用管理を行うことで効率的にマルチクラウドを運用することができます。

また、効率的に運用管理を行っていく場合の手法の一つとしてガイドラインの制定があげられます。マルチクラウドでは、運用監視やバックアップ、システム保守、契約周り、ID管理などクラウドサービスごとにサービス内容やルールが異なります。そこでガイドラインを作成し、インシデント発生時の連絡フローやサービスごとの通知への対応方法、利用申請や請求処理やID管理などをルール化して運用フローに組み込むことで、負荷を軽減し効率的な運用を進めることができます。そして、ガイドラインを制定しルール化することで、ユーザー部門が勝手にクラウドサービスを利用するなどのリスクを軽減することもできるでしょう。

マルチクラウドの導入事例

マルチクラウドを導入して運用する事例として下記のようなケースがあります。

社内で完結する部分と顧客サービスでクラウドをわける

社内での根本的なシステムはオンプレミスとしてひとつのクラウドサービスを使用し、顧客への提供が絡むシステムは複数のクラウドサービスを利用するケースです。社内システムはひとつのインターフェイスなので、クラウドサービスを追加しても負担になることがありません。

複数の国に拠点をもつ企業のマルチクラウド

海外で複数国に拠点をもつ企業が国ごとに異なる管理システムを利用していたケースです。複数の管理システムが存在するために拠点での作業負担が大きくなっていたことから、拠点はひとつのクラウドサービスにしぼり各国の管理システムは別のクラウドサービスで行うなど、二つのクラウドサービスに集約することで拠点と管理システムとのやりとりの負担が軽減しました。

目的によってサービスを使い分ける

管理場所だけではなく利用目的によってマルチクラウドを使い分けるケースです。もともとひとつのクラウドサービスだけで対応していたのですが、社内組織ごとに使っているシステムがそれぞれ異なっていたために、システム開発に負担がかかっていました。そのような負担の軽減や障害時のリスク分散を実現するために、運用管理システム導入と同時にマルチクラウドに移行することに決めたのです。もともと利用していたクラウドサービスが対象に含まれている運用管理システムを採用することでシステム開発の負担が軽くなり、アクセス権限の設定などの管理体制も見直すことができました。なお移行は徐々に進められ、しばらくはハイブリッドクラウドで運用していたようです。

サーバー障害への対応を効率化

WEBコンテンツを配信する企業にとっては、サーバーが停止してしまうと大きな問題にもつながってしまいます。この企業には、マルチクラウド導入前は監視サーバーが数百台あったのですが、委託先が別々の企業であったため、問題が発生したしたときに人の作業で通知が送られていたため、発生から確認まで数十分かかることもありました。しかしマルチクラウド化して管理体制を一元化し、さらに問題が発生した際は自動的に通知されるようになったため、問題発生確認までの時間が10分未満へと大幅に短縮されました。また通知をおこなう作業員が不要になったことから、委託費コストをなんと9割以上も削減することもできたのです。複数サービスを利用することでコストが高くなるケースもありますが、もともとの人手や負担が多かった場合にはコストを抑えられるケースもあります。

マルチクラウド環境を整備するには

今後マルチクラウド環境を導入することを検討している企業が整理しておくべきポイントがいくつかあります。

現状システムの問題点を洗い出す

現在のシステム状況によって発生している問題は異なります。導入前に改善すべき問題点をひととおり洗い出しておきましょう。よくある事例としては下記があります。

・社内システムの開発や使用担当者が複数の環境に対応しており、負担がかかっている

・監視状況が自動化されておらず人手がかかっている

・データ収集、集計に時間がかかっている

・障害発生時に大規模な範囲で作業ができなくなる

・オンプレミスの社内管理にコストがかかっている

抱えている問題点によっては、ただマルチクラウドを導入するだけでは解決しない事例もあります。特に複数の管理システムを利用していることで負担がかかっているケースでは、マルチクラウド化しても同様の問題が発生してしまうため、事前に負担が減り運用が統一できる運用管理システムの導入検討が必要になることもあるでしょう。改善点が見えていることで利用するべきサービスをしっかり選定することができます。

移行にあたっての負担を減らす

マルチクラウド環境にするための移行が大きな負担となってしまうと、それだけで作業時間がとられてしまいます。環境を変更する際にある程度の負担はどうしても必要となってしまいますが、できるだけ減らせるように考えなければいけません。現在利用しているクラウドサービスをカバーしているものや、インターフェイスが大きく変わらない、あるいは複雑ではない運用管理システムを選ぶことが重要です。

移行計画を立てる

負担軽減にもつながりますが、事前にどの程度の期間でどこまで移行するかなどの計画を立てておく必要があります。特にオンプレミスで社内サーバーを使用している場合には、マルチクラウドに移行する際にハイブリッドクラウドの期間を経て最終的に社内サーバーの使用をやめるケースが多くあります。一部業務でテストとして運用し、実際に活用することで発生する問題点などを集めておくのもよいでしょう。

またハイブリッドにする際にはどのシステムを社内サーバーで実施するのか、複数のクラウドサービスはどのように使い分けるのかなども事前に決めておかなければいけません。最終的なゴールとなる環境を定めて、そこに移るまでのプロセスを綿密に立てておきましょう。

まとめ

複数企業のクラウドサービスを活用するマルチクラウドは、データ通信の分散やデータ消失時のリスクを減らす目的で導入されます。しかし、複数のクラウドサービスをそのまま別々に利用することでシステムの管理や開発に負担がかかってしまい、セキュリティのリスクも高くなってしまいます。複数社のクラウドサービスを利用する場合は、データの監視や管理、インターフェイスなどを一元化する基盤を構築することで、より効率的な運用管理を実現することができます。

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