【2025年7月更新】新リース会計基準の適用はいつから?概要や企業への影響、対応手順を解説

- 2027年4月から適用される新リース会計基準の概要と背景
- 新基準による企業への影響と実務上の注意点
- 新基準への対応ステップとJBCCの支援サービス
2027年4月1日から、新しい「リース会計基準」がスタートします。これは、多くの企業の財務諸表や業務の進め方に大きな影響を与える可能性のある、重要なルール変更です。
新しい基準では、原則としてすべてのリース契約が会社の資産・負債として計上されます。その結果、自己資本比率といった経営指標が変化したり、会計と税務で別々の管理が必要になったりと、これまでになかった課題が生まれるかもしれません。
この記事では、複雑に思える制度改正の背景から、具体的な変更点、そして企業としてどう準備すべきかまで、分かりやすく解説していきます。
また、専門家が最新情報や実務のポイントを解説する無料セミナーも開催していますので、ぜひ最後までご覧ください。

2027年4月強制適用まで待ったなし!今すぐ始めるべき新リース会計基準の解説
新リース会計基準への対応は、企業の財務戦略に大きな影響を与えます。本セミナーでは、公認会計士が実務対応のステップや最新システム対応をわかりやすく解説。
詳細 & お申込みはコチラ
リース会計基準とは

リース会計基準とは、日本の企業会計基準委員会(ASBJ)が取り決めている、企業が行う「リース取引」の会計処理について定めたルールのことです。
ここでいうリース取引とは、コピー機やパソコン、不動産といった資産を、所有者から一定の期間、料金を支払って借りる契約のことです。
この会計基準への対応は、主に金融商品取引法の適用を受ける上場企業などに義務付けられています。そのため、上場していない中小企業などの場合、必ずしも対応が必要となるわけではありません。
現行のリース会計基準とは?(ファイナンスとオペレーティング)

現行の日本のリース会計基準では、リース取引を契約内容に応じて、以下の2つに分類しています。
- ファイナンス・リース取引
- オペレーティング・リース取引
それぞれの違いを解説します。
ファイナンス・リース取引
ファイナンス・リース取引は、以下の2つの条件にあてはまる契約を指します。
- 解約不能:契約期間の途中で解約できない。
- フルペイアウト:資産の購入代金や諸経費のほぼ全額を、借りている側がリース料として支払う。
リース取引は、リース会社が企業の代わりに資産を購入し、その代金を分割で回収する性質を持っています。リース期間が終わった後に資産の所有権が利用者に移るかどうかで、「所有権移転ファイナンス・リース取引」と「所有権移転外ファイナンス・リース取引」の2つに分かれます。
この取引の会計処理は、一部の例外を除き「オンバランス」が基本です。これは貸借対照表に、「リース資産」と「リース債務」の両方を記録することを意味します。
オペレーティング・リース取引
ファイナンス・リース取引以外のすべてのリース取引が、オペレーティング・リース取引にあたります。オフィスの賃貸借契約や、短期間のレンタル契約などがその代表例です。
こちらの会計処理は「オフバランス」となり、貸借対照表には記録されません。毎月支払うリース料金を、経費として計上するシンプルな方法が採られています。
新リース会計基準への改正の背景と目的

なぜ今、リース会計基準が大きく変わるのでしょうか。それには、「国際的な会計基準とのズレをなくすため」、「財務情報の透明性を高めるため」、という2つの目的があります。
国際的な会計基準とのズレをなくすため
かつて日本のリース会計基準は、国際会計基準とほとんど同じ内容でした。
しかし、2016年に国際財務報告基準(IFRS)第16号が、「原則すべてのリース取引を資産計上する」と改正し、両者の間に明確な違いが生じました。結果として、日本企業の財務情報が国際的に比較しづらくなり、海外投資家の判断にも影響を与えてしまっているのです。
今回の改正は、このズレを解消し、世界の企業と同じ土俵で財務状況を比べられるようにするための重要な一歩です。
財務情報の透明性を高めるため
新しいリース会計基準は、企業の財務情報の透明性を高め、投資家にとって分かりやすい情報開示につながります。
現行のリース会計基準では、オペレーティング・リースは貸借対照表に計上されないため、取引実態が見えづらい課題がありました。また、オフバランス処理では、企業の負債や資産の実態が見えづらく、投資家が企業の経営リスクを正確に把握できない点も課題でした。
新基準では、ほぼすべてのリースが「使用権資産」と「リース負債」として貸借対照表に記載されます。会社の財産や負債の状況がより正確に分かるようになり、投資家も適切な判断をしやすくなります。
2027年4月から適用される新リース会計基準とは?

新しいリース会計基準では、従来の「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の区別がなくなり、原則としてすべてのリース取引を貸借対照表に計上(オンバランス)する会計処理に統一されます。
この変更によって、今まで経費として処理するだけで済んでいたオペレーティング・リースも、新たに「使用権資産」と「リース負債」として資産・負債の両方を計上しなければなりません。
この新基準は、2027年4月1日以降に始まる事業年度の最初の日から強制的に適用されます。ただし、希望する企業は、2025年4月1日から始まる事業年度の最初の日から前倒しで適用することも可能です。
主な適用対象は、上場企業や会社法で定められた大会社などです。
新リース会計基準による主な変更点

新リース会計基準による主な変更点は、以下の4つです。
- 全リース取引のオンバランス計上
- リースの定義と識別方法の見直し
- リース期間の算定方法(延長・解約OP考慮)
- 財務報告での表示・開示の拡充
それぞれについて解説します。
全リース取引のオンバランス計上
新リース会計基準では、すべてのリース取引で原則としてオンバランス計上が義務付けられます。
従来のリース会計基準と新リース会計基準の違いは、以下のとおりです。
区分 | 従来の会計基準 | 新リース会計基準 |
---|---|---|
ファイナンス・リース取引 |
オンバランス ※リース資産、リース債務 |
オンバランス ※使用権資産、リース負債 |
オペレーティング・リース取引 |
オフバランス ※賃貸借処理 |
オンバランス ※使用権資産、リース負債 |
従来ではオフバランス処理が認められていたオペレーティング・リースも、新リース会計基準では貸借対照表への計上が必要です。
たとえば、これまで費用処理していたオフィスビルの賃貸借契約や複合機のリースなども、オンバランス処理に変更されます。
また、勘定科目も見直され、「リース資産」は「使用権資産」へ、「リース債務」は「リース負債」へ名称が改められました。
リースの定義と識別方法の見直し
新基準では、契約書に「リース」と書かれているかどうかではなく、その契約の「経済的な実態」でリースかどうかを判断します。
具体的には、「特定された資産を、企業が自分の意思でコントロールして使える権利があるか?」という点が新しい判断基準です。
この考え方に基づき、新リース会計基準ではリースを以下のように定義しています。
-
<リースの定義>
原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分
引用:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表|ASBJ
この定義の変更で、これまでリースとして扱ってこなかった一般的な「レンタル契約」や「サービス契約」の一部なども、その中身によっては新基準のリースに該当する可能性が出てきました。
たとえば、以下のような契約が対象です。
- 不動産関連: オフィスビル、営業拠点、社宅、駐車場などの賃貸借契約
- 動産関連: パソコンやサーバー、什器、工場の機械、車両などのリース・レンタル契約
企業は契約内容を再確認し、適切にリースとして識別しなければいけません。
リース期間の算定方法(延長・解約オプション考慮)
リース期間の算定方法も新リース会計基準で見直されます。現行のリース基準では、契約書に記載された期間をリース期間としていました。新リース会計基準では、契約上の期間に加え、延長オプションや解約オプションの有無を考慮しなければいけません。
この算定方法の変更により、リース資産とリース負債の金額だけでなく、費用の期間配分にも影響が出ます。
財務報告での表示・開示の拡充
新リース会計基準では、財務報告での表示や開示内容が大幅に拡充されます。
現行基準では、販売費および一般管理費に計上されていたオペレーティング・リースの支払リース料は、「使用権資産の減価償却費」と「リース負債の支払利息」として処理されます。このため、営業利益の金額にも影響が出る可能性があり、株主や金融機関といった会社に関係する人々への説明が必要になるでしょう。
また、財務諸表の注記も開示項目が増え、使用権資産の内訳やリース負債の満期、変動リース料などの詳細な情報開示が必要です。
新リース会計基準による企業への影響

新しいリース会計基準の適用により、企業はさまざまな影響を受けます。具体的には以下のとおりです。
- 会計・経理実務の複雑化
- 財務指標の悪化(自己資本比率の低下など)
- システム対応の必要性と管理体制の見直し
- 税務処理の複雑化
それぞれについて、順番に解説します。
会計・経理実務の複雑化
まず考えられるのが、経理部門の仕事が大幅に複雑になることです。これまでのようにリース料を経費として処理するだけでは済まなくなり、例えば以下のような新しい業務が発生します。
- 全リース契約の洗い出しと精査: 社内に点在する契約書をすべて集め、新しい「リース」の定義にあてはまるかを一つひとつ判断する必要があります。
- 資産・負債の測定: 対象となるリースごとに、割引率など専門的な計算を用いて「使用権資産」と「リース負債」の金額を計算しなければなりません。
- 複雑な会計処理: リース期間が終わるまで、使用権資産の減価償却とリース負債の利息計上という、複雑な会計処理が毎期求められます。
これらの業務をExcelなど手作業で管理するのは限界があるため、多くの場合、会計システムの改修や新しいシステムの導入が必要になるでしょう。
財務指標の悪化(自己資本比率の低下など)
決算書の数字、特に企業の健全性を示す経営指標が悪化する可能性があります。
これまで貸借対照表に載っていなかったリース契約が資産・負債として計上されると、「総資産」と「総負債」が同時に増加します。自己資本の額は変わらないため、企業の財務健全性を示す「自己資本比率(=自己資本 ÷ 総資産)」の分母だけが大きくなり、結果として比率が下がってしまうのです。
同様に、「ROA(総資産利益率)」といった収益性を示す指標も低下する可能性があり、金融機関や投資家への丁寧な説明が重要になります。
システム対応の必要性と管理体制の見直し
会計処理が複雑になるため、Excelでの手作業による管理は非常に困難になります。なぜなら、リース契約ごとに使用権資産の減価償却やリース負債の利息計算を個別に行う必要があるからです。
多くの場合、新リース会計基準に対応した会計システムの導入や、今使っているシステムの改修が不可欠です。
税務処理の複雑化
税金の計算にも影響が及びます。会計上の費用(減価償却費+支払利息)と、税務上の損金(リース料)の金額が異なるため、その差を調整する税効果会計が複雑になり、法人税の申告書を作成する難易度が上がります。
この負担増に対応するため、税務管理システムや業務フローの見直しが必要になる場合もあります。
新リース会計基準適用に向けた準備や対策

新リース会計基準の適用は、すべての企業にとって待ったなしの課題です。特にこれまでオペレーティング・リースを多用してきた企業にとって、大きな影響があります。
2027年4月1日の強制適用に向けて、今から着手すべき具体的な準備と対策を3つのステップに分けて解説します。
- 現状把握と影響分析
- 方針決定と計画策定
- システム導入と業務フローの構築
1.現状把握と影響分析
最初に取り組むべきは、自社の現状を正確に知ることです。
まずは経理部門だけでなく全社を挙げて、不動産の賃貸借契約やレンタル契約など、あらゆる契約を網羅的に洗い出しましょう。
ここで注意したいのが、一見するとリースには見えない「隠れリース」の存在です。これは、契約書に「リース」と書かれていなくても、実質的に特定の資産を借りていると判断される契約を指します。こうした隠れリースを見つけるには、「外注費」や「賃借料」といった勘定科目の支払先リストを手がかりに関連契約を探していくのが効率的です。
契約の洗い出しが終わったら、次にその影響を具体的な数字で分析します。新基準の対象となる契約を特定し、それぞれで「使用権資産」と「リース負債」のおおよその金額を計算しましょう。これにより、決算書や自己資本比率といった経営指標にどれくらいのインパクトがあるのかを、事前に把握できます。
2.方針決定と計画策定
現状把握と影響分析が完了したら、方針決定と計画策定に進みます。
まず、新リース会計基準で認められている複数の処理方法の中から、自社に適した会計方針を選定します。短期リースや少額資産リースの範囲、リース期間の判定方針などの扱い方は、実務負担に大きく影響するため、慎重な判断が必要です。
さらに、早期適用の有無を検討し、強制適用日に向け、プロジェクト全体の詳細なスケジュールとマイルストーンを策定します。
加えて、システム対応方針も重要な決定事項です。既存システムの改修や新システムの導入、外部システムの利用など、コストと機能の両面から最適な選択肢を検討します。必要なシステム機能を洗い出し、業務フローとの整合性を考えながら予算計画も立てましょう。
3.システム導入と業務フローの構築
計画が決まったら、いよいよ実作業のフェーズです。「システムの導入・改修」と、それに合わせた「業務フローの構築」を並行して進めていきましょう。
新リース会計基準の複雑な計算や多数の契約情報を手作業で管理するのは、現実的ではありません。正確性と効率を両立するには、やはり新基準に対応した会計システムの活用が最適解といえます。
例えば、JBCCが導入を支援する中堅・大手企業向けシステム「固定資産奉行V ERPクラウド」は、新リース会計基準に標準で対応しています。使用権資産の登録から減価償却、支払利息の自動計算まで、煩雑な業務をまとめて効率化できるのが大きな特長です。
このようなシステム導入と並行し、新しい業務フローを前提としたマニュアルの整備や関係者への研修も進めます。これにより、業務の標準化と属人化の防止を図りましょう。
奉行シリーズ
【無料セミナー】新リース会計基準対応を、専門家が徹底解説します!
新リース会計基準への対応という、複雑で専門知識が求められる課題に対し、具体的な解決策と最新情報をお届けするため、JBCCではオンラインセミナーを開催いたします。
2027年4月1日の強制適用と聞くと、まだ時間があるように思われるかもしれません。しかし、全社的な準備には1年以上を要することも珍しくなく、決して早すぎることはありません。
本セミナーでは、新基準の基礎知識から、今すぐ始めるべき具体的な対策、そして最新のシステム対応まで、各分野のプロフェッショナルがわかりやすく解説します。
<このセミナーで得られること>
- 公認会計士が解説する、新基準のより深い理解につながる重要な論点
- JBCC経理担当者が語る、対応のリアルな状況と課題
- 「固定資産奉行V ERPクラウド」の新基準への対応機能デモ

2027年4月強制適用まで待ったなし!今すぐ始めるべき新リース会計基準の解説
新リース会計基準への対応は、企業の財務戦略に大きな影響を与えます。本セミナーでは、公認会計士が実務対応のステップや最新システム対応をわかりやすく解説。
詳細&お申し込みはコチラ
よくある質問
- Q1. 新リース会計基準はすべての企業に適用されますか?
- A. 主な対象は上場企業や会社法で定められた大会社です。中小企業には義務ではありませんが、将来的な対応を見据えて準備することが推奨されます。
- Q2. オペレーティング・リースもオンバランス処理が必要ですか?
- A. はい。新基準では、従来オフバランス処理されていたオペレーティング・リースも「使用権資産」と「リース負債」として貸借対照表に計上する必要があります。
- Q3. どのような準備をすれば新基準に対応できますか?
- A. 契約の洗い出しと影響分析、会計方針の決定、システム導入と業務フローの構築が必要です。
JBCCでは「固定資産奉行V ERPクラウド」などの支援サービスを提供しています。
まとめ
新リース会計基準は2024年9月13日に公表され、2027年4月1日より上場企業に対して対応が義務付けられます。これまでオペレーティング・リース取引として会計処理していた場合、原則としてすべてのリース契約をオンバランスでの会計処理に統一しなければなりません。その結果、経理財務で使用するITツールの新たな導入や見直し、業務フローの変更など、経理財務担当者への負担が大きくなると懸念されます。
「業務のデジタル化に向けて、どのようなITツールを使用すればいいかがわからない」「ITツールの見直しをサポートしてほしい」このような悩みがある場合、JBCCにぜひご相談ください。JBCCは、バックオフィス業務をサポートするシステムである「奉行シリーズ」の導入支援を行っています。以下のページより、ぜひ気軽にお問い合わせください。

奉行シリーズ
オービックビジネスコンサルタント社の奉行シリーズは 累計56万社以上の企業に導入されています。中小企業のお客様はもちろん、近年では中堅企業や上場企業のお客様でも急速に導入が進んでいます。JBCCはOBC Alliance Partnership(OAP)Gold パートナーとして、これらの奉行シリーズを、基幹連携やクラウドサービス運用などと提案・導入支援しております。OBC Alliance Partnership(OAP)Gold パートナーとして、製品パッケージの販売および導入支援を行っております。
詳細を見る
企業のIT活用をトータルサービスで全国各地よりサポートします。
JBCC株式会社は、クラウド・セキュリティ・超高速開発を中心に、システムの設計から構築・運用までを一貫して手掛けるITサービス企業です。DXを最速で実現させ、変革を支援するために、技術と熱い想いで、お客様と共に挑みます。