SharePoint で効率的にファイル共有をするには?課題とベストプラクティスを専門家が解説
Microsoft 365 にはさまざまなアプリがあり、その中でもグループウェアとして広く使われているのが SharePoint です。情報発信やドキュメントの編集ができることから、ファイル共有のために利用したいと考える人も多いでしょう。
SharePoint でのファイル共有は可能ですが、ファイルサーバーとして利用するにはいくつかの課題があります。それらをクリアすれば、ファイルサーバーとしてより効率的な利用が可能になるでしょう。
本記事では SharePoint におけるファイル共有の方法や課題、ベストプラクティスをご紹介します。
※本記事の SharePoint の操作手順は2024年9月10日時点の情報です。
SharePoint とは?
SharePoint は Microsoft 365 の中にあるグループウェアの機能を持つツールです。ドキュメント保管や情報共有、社内掲示を効率的に行えます。
SharePoint では、最初にテナントの中にサイトを作成し、その下にリストやぺージ、ドキュメントライブラリなどのコンテンツを作っていきます。ファイル共有は、このうちのドキュメントライブラリの中で行います。
このほか、Microsoft Office(以下:Office)との連携やワークフローの構築なども可能です。
チームサイトとコミュニケーションサイト
SharePoint には「チームサイト」と「コミュニケーションサイト」があります。
チームサイトは Microsoft Teams(以下:Teams)でチームを作ると、自動で作成されるサイトです。限られたチームメンバーで共同作業を行うのが中心となります。
一方、コミュニケーションサイトは、チームを作っても自動作成されません。チームよりも広い範囲に向けて情報発信を行うのに適しています。組織のコンテンツは SharePoint のコミュニケーションサイトを利用し、発信や編集のメンバーを限定して管理すると良いでしょう。
OneDrive との違い
SharePoint と似た機能を持つツールに「OneDrive」があります。SharePoint との大きな違いは「個人向き」か「組織向き」かです。
OneDrive は、基本的に個人に適したツールです。データは個人ストレージに保存し、データを削除した場合は、ストレージのユーザーしか復元できません。またファイルを保存したユーザーのアカウントが削除された場合は、保存期間後削除されるなど、データ共有が「人」に依存します。基本的に個人や小規模の共有を想定しており、大規模なファイル共有には向いていません。
一方、SharePoint は組織に適したツールです。データをサイトに保存し、データが削除された場合も、権限のあるユーザーなら誰でも復元できます。またデータはサイトがなくならない限り削除されないなど「場所」に依存します。チームを作っての共有や共同作業は SharePoint が向いていると言えるでしょう。
SharePoint でファイル共有を行うメリット
先述したように、SharePoint は組織でのファイル共有に適したツールです。組織でのファイル共有では、複数人での編集や効率化などが課題になりますが、SharePoint であればこれらの課題をクリアできます。ここでは、SharePoint でファイル共有を行うメリットをご紹介します。
バージョン履歴が残る
SharePoint では、バージョン履歴が残ります。
いつ、誰が保存したかが履歴として残るため、ミスが起こった際の原因究明に役立つでしょう。また意図しない動作やランサムウェアによる妨害などで、現在のデータが利用できなくなったときにも、保存されたバージョンを復元できます。
従来は500がバージョンの規定値で、変更する場合は手動で設定する必要がありましたが、現在は時間経過やアクティビティに基づいて、自動で最適なバージョンを設定するよう選択できます。
リアルタイムでファイル共有や編集ができる
SharePoint は、リアルタイムでファイル共有や編集ができます。打ち合わせで必要なファイルを共有して皆で閲覧したり、その場で編集して作業を完了させたりすることが可能です。
またインターネットさえあれば、どこからでも接続できるため、場所を選びません。テレワークや出張先からの閲覧・作業も可能で、スピーディに仕事ができます。
AIを利用した効率化が可能
SharePoint では、AIを利用した効率化が可能です。SharePoint 内のデータを Copilot で検索・利用できます。
マイクロソフト社はAIに力を入れており、2024年1月からGPT-4を搭載したAI生成ツールである「Copilot」をユーザーに提供しています。Copilot では、Microsoft 365 の Office アプリを操作でき、データを探したり、リスト化したりといった利用が可能です。
例えば「SharePoint 内にある営業に関連するデータをリスト化して欲しい」と依頼すれば、AIがリストを作成してくれます。
ただしAI活用には、活用するデータの内容や豊富さ、信頼性、活用するためのスキルセットなどの問題点もあります。利用は慎重に検討しましょう。
SharePoint はファイルサーバーとして利用できるのか
では、SharePoint はファイルサーバーとして利用できるのでしょうか。結論は「頑張ればできる」です。
ただ SharePoint の本質はグループウェアであるため、ファイルサーバーとして利用するにはいくつかの課題があります。課題を解決すれば、利用は可能でしょう。
もし SharePoint をファイルサーバーとして利用するのなら、以下3つの課題をクリアする必要があります。
- 外部共有
- データの容量
- データの管理・ガバナンス
SharePoint のファイル共有における課題を解決する方法
SharePoint でファイル共有を行うには、先述した3つの課題があります。ここではそれらの課題をより詳細に解説し、解決する方法をご紹介します。
① 外部共有課題の解決方法
外部共有の課題は、サイトの権限管理の設定を徹底することでカバーしましょう。
SharePoint で外部共有を行う場合には、サイト全体を共有することになり、アクセスの細かな制限をかけられません。そのため、徹底したサイトの権限管理が必要です。
サイト全体の共有権限を設定するには「SharePoint 管理センター」から「ポリシー⇒共有⇒外部共有」で共有レベルの設定を行います。この設定を行うと、ここで設定した共有レベルがベースとなり、サイト単位の共有はこの範囲内でしか設定できなくなります。
サイト単位の設定が必要な場合は、SharePoint 管理センターから「サイト⇒アクティブなサイト」で設定が可能です。ユーザー側で共有リンクを設定することも可能ですが、設定できるのは共有期限のみです。パスワードの設定はできません。
もし徹底した管理が難しい場合は、SharePoint と一緒にオンラインストレージを利用しましょう。SharePoint は社内共有基盤やコミュニケーションツールとして利用し、外部との共有や管理はBox、Dropboxなどのオンラインストレージを利用すると管理が楽になります。
社内と社外の共有基盤を分ければ、共有時のミスが減る上に、権限を細かく設定できます。
② データ容量の解決方法
データ容量の問題は、バージョン数を減らして解決しましょう。上限を少なくすることで、保存されるバージョンの数が減って容量に余裕ができます。
SharePoint はバージョンによるデータ復元が可能です。しかし、新しいバージョンの追加、世代管理されるバックアップデータ、さまざまなデバイスからのアクセスなど、容量を消費しがちです。
そもそも SharePoint の容量は「1TB+(ユーザー数×10GB)/1社」と、容量は追加できますが OneDrive より少なめになっています。またバージョンはデフォルトで500、最大30日保管するように設定されています。
そこで「ライブラリの設定⇒バージョン設定」からバージョンの上限値を変更しましょう。これによって使用する容量が減り、容量に余裕が生まれます。サイトでストレージの上限を設定することも可能です。
容量問題を根本的に解決するなら、オンラインストレージの利用もおすすめです。オンラインストレージを利用することで、容量の枯渇が少なくなります。Boxは容量無制限、Dropboxは2023年から容量を制限していますが、1000TBまでは追加で購入できます。
また、オンラインストレージは検索がしやすいこともメリットです。特にマルチSaaSでは、データが散らばって検索性が下がる、データの場所が分からないなどの問題が起こりますが、データをオンラインストレージに保管すれば、検索がしやすくなります。
加えて、オンラインストレージではAI活用を視野に入れた動きが出ています。Boxは Copilot との連携を発表。DropboxはSaaSにつなげてユニバーサル検索(Webページ以外のコンテンツも検索できる機能)ができるようにするなど、AIによる効率的な利用方法が模索されているようです。
③ データの管理・ガバナンスの解決方法
データの管理・ガバナンスの問題は、チーム作成の制限でカバー可能です。
SharePoint のメリットは、自由にチームを作成できることですが、チームができるたびにサイトが作られるため、サイトが乱立しがちです。管理が行き届かなくなり、把握できないチームやサイトが出てくるという問題点があります。そのため、チームの作成を制限して、管理者の許可を必須にしましょう。
チーム作成を管理者の許可制にするには、Microsoft Entra 管理センター、もしくは Azure AD から「グループ⇒全般でグループの作成制限ができる」を選択します。
ただこの場合、管理者の負担になる上、自由度が低くなって利活用の妨げになるという課題があります。もし管理者の負担が重くなるようなら、サードパーティを利用して管理を行うと良いでしょう。
おすすめは、AvePointの「Cloud Governance」です。Cloud Governanceは、Microsoft 365 の運用管理を自動化するツールで、チームやサイトの払い出し、ライフサイクルポリシーの自動適用など、ガバナンスを維持しながらIT管理部門の負担を軽減してくれます。
必要項目を入力してCloud Governanceに申請すると、管理者に通知がいき、ポリシーに基づいたチームが作成されます。有効期限や容量追加についての案内を出すことも可能です。これによってチームのライフサイクルの運用が自動化し、乱立を防げます。チームのメリットである利便性や自由度の高さも担保されるでしょう。
SharePoint でのファイル共有方法
ここまで SharePoint でのファイル共有の問題点と解決方法をご説明しました。では、実際に SharePoint でファイル共有を行ってみましょう。ここでは、ファイル共有の具体的な方法をご説明します。
① SharePoint サイトのライブラリにアクセスする
まずは SharePoint のサイトにアクセスし、左側のメニューから「ドキュメント」を選択します。
サイトを作成していない場合は、先にサイトを作成しましょう。サイトの作成方法は、以下を参照してください 。
② 共有するファイルを選択する
次に共有するファイルを選択します。すでにアップロードされている場合には、ドキュメント名の左にある〇をチェックして、上部にある「共有」をクリックします。
まだアップロードをしていない場合は「ファイルをここにドラッグします」と記載のある場所にファイルをドラッグするか、上部の「アップロード」をクリックして、アップロードするファイルを選択しましょう。その後、左側の〇にチェックを入れて「共有」をクリックします。
なお、複数のファイルを同時に共有はできません。複数のファイルを共有したい場合は、フォルダを作って複数のファイルを格納し、フォルダを共有する必要があります。
③ 権限の設定を行う
次に権限の設定を行います。
「共有」をクリックすると「リンクの送信」という画面が出てくるため、リンクを共有するアドレスを入力すれば共有が可能です。ただし、この場合はリンクを知っているユーザー全員がアクセスできるようになってしまうため、権限の設定が必要です。
権限の設定では「すべてのユーザー」や「リンクを知っている組織内のユーザー」「既存のアクセス権を持つユーザー」などが選択できます。また「その他の設定」では、編集権限やダウンロードの禁止、パスワードの設定なども可能です。
④ 適用と送信
権限の設定をしたら「適用」をクリックします。
メールアドレス入力欄に、アドレスや名前などを入力して送信しましょう。メールアドレス入力欄の下にはメッセージボックスもあるため、必要であればメッセージを入力します。
SharePoint でのファイル共有におけるポイント
SharePoint でのファイル共有には課題がありますが、設定を細かくしたり、外部サービスと併用したりすることで課題をクリアできます。その上で、より効果的に利用するには権限設定や管理、使い方などのポイントを押さえることが大切です。ここでは、SharePoint におけるファイル共有のポイントをご紹介します。
シンプルかつ適切な権限の設定
SharePoint ではシンプルかつ適切な権限の設定が大切です。
SharePoint は細かい権限管理(カスタムアクセス許可レベル)ができますが、一元管理はできません。そのため、細かい権限設定をすると管理が複雑になって行き届かなくなる可能性があります。
そこで、シンプルにサイト単位に権限を設けます(SharePoint グループ)。これによって、権限管理が楽になり、使いやすくなります。権限ごとにサイトを作成すると良いでしょう。
メタデータやビューによる管理
SharePoint では、フォルダによる管理ではなく、メタデータやビューによる管理や検索がおすすめです。なぜなら、ユーザーそれぞれに合わせた閲覧や検索が可能になるためです。
フォルダ管理は人によって見たいフォルダの構成が違うため、フォルダで管理を行うと検索がしにくい場合があります。例えば、ある人はクライアントごとにフォルダ分けされている方が検索しやすいと感じていても、別の人は月ごとに管理されていた方が検索しやすいと思っていることがあるでしょう。
SharePoint では、列を追加したりビューを切り替えたりすることが可能です。ステータスやドキュメントの種類などで整理できるほか、ステータスでグループ化もできます。この方法で管理した方が、ファイル整理がしやすく、ニーズに応えた検索やファイル整理がしやすくなります。
用途に合わせた使い分けをする
SharePoint を有効的に活用にするには、用途に合わせた使い方をしましょう。特にTeams と使い分けをすることで、より効率的な利用が可能です。
作業の全てを Teams でやると、誰でも編集できる、正式なバージョンが分からない、作成途中のものを利用されてしまう、自分に関係ないデータもあってごちゃごちゃするなどのデメリットがあります。
そこで Teams とサイトで使用用途を分けて利用します。作成中や改訂中のデータは Teams でやり取りし、出来上がったものをコミュニケーションサイトに上げるなどの方法が適しているでしょう。
また各種サイトを作る方法もあります。例えば、営業のコミュニケーションサイトは営業の人だけが見られる、規定管理のサイトは規定管理チームだけが見られるなど、ユーザーを限定した使い方をすると良いでしょう。
最終的にはさまざまなサイトを作って、ハブサイトにすることをおすすめします。ハブサイトにしてサイト同士を関連付けると、サイトの関連付けを柔軟に変更できます。またURLが変わらない、統一感を持たせられるなどのメリットもあります。
まとめ
SharePoint では、権限設定や容量の問題を解決することで、ファイルサーバーとしての利用が可能です。ただし、より効率的に利用するなら他サービスと併用して上手に使い分けるのが良いでしょう。
もし自社に適した使い分けが分からないとお悩みの方は、JBCCにご相談ください。JBCCは、米国マイクロソフトのパートナーアワードにおいてファイナリスト3社に初選出。Microsoft Award を2021年度より3年連続で受賞など、マイクロソフト社より高い評価を受けています。専門的なスキルを持ったスタッフが Microsoft 365 の利活用や定着をサポートする「Microsoft 365 ワークショップ」を無料で開催しています。
JBCCオリジナル「Microsoft 365 ワークショップ」
基本的な使い方や活用方法、定着を無償でサポートするJBCCオリジナルのワークショップです。Microsoft 製品を熟知したスタッフがよくあるお悩みについて、導入から活用、定着、運用、分析までトータルマネージいたします。
詳細を見る企業のIT活用をトータルサービスで全国各地よりサポートします。
JBCC株式会社は、クラウド・セキュリティ・超高速開発を中心に、システムの設計から構築・運用までを一貫して手掛けるITサービス企業です。DXを最速で実現させ、変革を支援するために、技術と熱い想いで、お客様と共に挑みます。