SharePoint でのワークフローの作り方。より効果的な活用方法を専門家が解説
新型コロナウイルス感染症の流行によって、場所を選ばない働き方が浸透しました。一方で日常的なコミュニケーションが難しくなったことから、コミュニケーション円滑のためにグループウェアを導入した企業も多いでしょう。グループウェアのワークフロー機能を使って、申請・承認業務を行うことでより効率的に業務を進められます。
本記事では Microsoft 365 の代表的なグループウェアである SharePoint でのワークフロー作成方法をご紹介します。より効果的な利用方法も解説していますので、ぜひ参考にしてください。

SharePoint とは?
SharePoint は Microsoft 365 の中にある、グループウェアの機能を持つツールです。ドキュメント保管や情報共有、社内掲示を効率的に行えます。
SharePoint では、サイトを最初に作って、その下に製品情報・案件進捗・在庫管理などの「リスト」や、掲示板・情報共有・リンク集などの「ぺージ」、製品情報・提案書・仕様書などのドキュメントライブラリといったコンテンツを作っていきます。 SharePoint そのものにワークフローの機能はありませんが、Microsoft Teams(以下:Teams)では簡単なワークフローの作成が可能です。他ツールと連携することでより複雑なワークフローも作成できます。
ワークフロー管理が重要な理由
ワークフロー管理が重要な理由は、属人化を防ぎ業務を効率化させるためです。
新型コロナウイルス感染症の影響によってリモートワークが浸透し、場所を選ばない働き方が可能になりました。しかし、稟議や支払い、注文、企画、システム権限、軽いものになると日報など、社内ではさまざまな承認業務が発生することは変わりません。リモートワーク、Web会議の浸透によってグループウェアの導入は進んでいますが、押印処理(承認業務)はまだ導入が進み切っておらず、承認状況が分からない問題が発生しています。
また押印処理が「人」に依存していると、承認者が外出・出張の場合に業務が滞ったり、人によって承認のタイミングが違ったりする場合もあります。
こうした押印処理の問題は、ワークフロー管理をしっかり行うことで解決できます。承認状況を可視化すれば、承認をした、されたなどの状況が分かりやすくなり、承認の進捗も統一可能です。
SharePoint におけるワークフローの機能
SharePoint では、日本ならではのワークフローを完全再現するのは難しいとされています。なぜなら、日本ならではのワークフローは複雑な分岐が行われる場合が多いためです。ただし簡易的なワークフロー機能であれば SharePoint にも備わっています。ここでは SharePoint におけるワークフローの機能をご紹介します。
承認機能
承認機能は、特定のメンバー内で承認を依頼する機能です。承認者や回答期限を設定してドキュメントを回覧し、必要なメンバーからの承認を得ます。
ドキュメントはリアルタイム閲覧が可能で、承認したメンバー、承認していないメンバーが明確になります。印刷した書類を承認者間で回覧すると、誰が承認したか、書類がどこで止まっているかが分からなくなることが多いですが、承認機能を利用すれば承認者が明確になるため、効率が良いでしょう。
もし非承認となった場合には、そこで処理を止める設定も可能です。
フィードバックや署名の収集
SharePoint には、作成したドキュメントをメンバーに公開して、フィードバックや署名をもらう機能があります。
例えば、作成途中のデータに対して意見をもらい、もらった意見を閲覧記録と共に集計して発信者に返す、リモートワークの従業員に対して閲覧とデジタル署名を求める、などの利用が可能です。どちらも作業の効率化に役立ちます。
タスク管理
SharePoint ではワークフローのタスク管理も可能です。
「アクティブ」「レビューの準備」「完了」の3段階のタスク状況が用意されており、それぞれ以下のような意味となります。
- アクティブ:タスクを割り当てた状態
- レビューの準備:メンバーによるタスクの処理中
- 完了:タスクの完了
ワークフローの管理では、マルチタスクが基本となるため、タスクを管理して追跡できるようにしておくことで、スムーズに承認作業や業務を進められます。
SharePoint でワークフローを作成するメリット
SharePoint でワークフローを作成すると、業務の効率化やコスト削減、承認状況の明確化といったメリットがあります。ここでは、これらのメリットについて詳しく解説します。
業務の効率化
SharePoint でワークフローを作成すると、業務の効率化につながります。
従来のように紙に印刷して承認者が閲覧するという流れの場合、承認者が不在だと書類の回覧が止まってしまうことがあります。場合によっては、承認が遅れたことによってビジネスチャンスを逃すことにもなりかねません。
SharePoint はオンラインで作成や承認が可能なため、外出先でも閲覧・承認ができます。またメンバーの同時閲覧も可能なため、決裁もスピーディに行えます。
コスト削減
SharePoint でのワークフロー作成は、コストの削減にもなります。発行から保存まですべてオンライン上で完結するため、印刷代や紙代、インク代などがかかりません。
またワークフローを一元管理して決裁スピードを上げることにより、承認者を探したり、誰が承認していないのか、どこまで回覧されたのかなどを確認したりする手間も省けます。これによって人的負担も削減でき、重要な仕事に時間を割くことができます。
申請・承認状況を確認できる
SharePoint のワークフローでは、申請・承認状況を確認できます。
紙で印刷した書類を回覧すると、承認したメンバー・していないメンバーが確認しにくいというデメリットがありました。また、他の書類に埋もれて承認が遅くなる、承認依頼を出したものの他のメールに紛れて気付かなかったなどの問題も起こっています。
SharePoint では PowerApps を利用して、SharePoint の画面に申請・承認状況を表示することが可能です。これによって申請・承認状況を常に確認できます。回答期限内に承認をしていないメンバーに対してリマインドを行うなどのルールを設けておくと、より効率的に決裁を進められます。

SharePoint でのワークフロー作成方法
SharePoint ではゼロベースからワークフローを作ることも可能ですが、より簡単にワークフローができるようテンプレートが用意されています。ここではテンプレートを使ったワークフロー作成の流れをご紹介します。
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リストの作成
まずは SharePoint にアクセスして、リストを作成しましょう。
上部のバーにある「新規⇒リスト」を選択し、リストの作成方法を選びます。リストの作成方法は「空白のリスト」「Excel から」「既存のリストから」の3つのほか、テンプレートを利用しての作成も可能です。必要な場合は「リストの設定」から項目を追加しましょう。
もしサイトの作成、メンバーの追加を行っていない場合は、リストの作成前に行います。
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SharePoint から PowerAutomate を起動する
次に PowerAutomate にアクセスします。
リストを開いたまま、上部から「統合⇒ PowerAutomate ⇒フローの作成」を選択しましょう。 -
テンプレートを選ぶ
続いて、ワークフローのテンプレートを選びます。「その他のテンプレート」をクリックすると、テンプレートの一覧が出てきます。
テンプレートには、どのツールでどんな動作をするのかが記載されているため、利用したい動作を選んで「続行」をクリックしましょう。
なお、ここでは PowerAutomate のテンプレートを利用していますが、PowerApps のテンプレートを利用する方法もあります。申請の画面を別途用意したい場合は、PowerApps でアプリを作成すると良いでしょう。件数が多くない場合は、SharePoint をデータベースにできますが、件数が多い場合は別途アプリが必要です。
ただし PowerApps には承認機能がありません。PowerAutomate を利用して別途機能を追加する必要があります。 -
ワークフローの設定を作成する
ワークフローの詳細が表示されたら、編集を行います。メールアドレスやリストの名前のほか、メールを送付する場合には宛先や件名、本文なども編集可能です。
SharePoint には「トリガー(「~したら」という状況)」に応じて「アクション(動作)」を行うフローを設定できます。他の動作が必要な場合は、これらを使って追加していきましょう。 -
動作確認
最後に動作確認を行います。
SharePoint では、ワークフローの設定に誤りがあると正確に動作しません。もし正確に動作しない場合は、手順やトリガー、アクション、アドレスに間違いがないかを再度確認しましょう。
SharePoint におけるワークフローの活用ポイント
業務上シンプルなワークフローを作成するのであれば、SharePoint でも作成可能です。
また他ツールと連携することで、より複雑なワークフローも作成可能です。ここからは SharePoint におけるワークフローの活用ポイントをご紹介します。
シンプルなワークフローで活用する
もともと日本の承認ワークフローは複雑で、SharePoint で完全再現するにはハードルが高く、メンテナンスも難しくなります。そのため、シンプルなワークフローでも対応できる場合に SharePoint や Teams を利用しましょう。
Teams には、シンプルな承認機能があります。例えば Teams の申請アプリでは、申請者を指定して承認を飛ばすワークフローが作成可能です。承認者は Teams や Outlook で受取って承認するだけです。
また、本来はローコードの知識が必要な PowerAutomate も、SharePoint を起点として利用することで簡単にワークフローが作成できます。先述したワークフロー作成の方法も、SharePoint を起点として PowerAutomate を利用しています。
Microsoft 365、PowerPlarform の各製品と連携することでシンプルなワークフローの作成が可能です。また、Microsoft 製品と連携したワークフローを作成すると、以下のようなことも可能になります。
- Teams に通知を出す
- PowerAutomate 経由で Teams にメッセージを送信する(個人チャット、グループ、チームのチャネルにメンションを飛ばすなども可能)
- PowerAutomate 経由で Outlook にメールを送る(他のメールサービスに送信するのも可能)
- PowerAutomate 経由で Planner にタスクを追加して担当者を割り当てる
- SharePoint のデータを利用して PowerBI でデータを可視化する
- PowerApps を利用して SharePoint のUIをカスタマイズする
Microsoft 製品は横のつながりが強いため、Microsoft の製品と連携すると利便性・満足度が上がります。
他ツールと連携する
もし複雑なワークフローを作成したいのであれば、他ツールと連携するのが良いでしょう。
企業によっては、承認先や公開先が分かれる、申請が連携している、社内の規定に沿った申請書にしたいなどの要望があります。しかし SharePoint のみではこれらの実現は難しいです。
そこで、ワークフロー専用システムの「コラボフロー」などと連携します。これによって、SharePoint の苦手とする部分をカバーできます。
コラボフローでは、印影表示、相談機能、一括承認、リマインドなどの豊富な機能があり、細かいアクセス権限の設定も可能。日本の特殊な承認フローにも対応できます。また Excel から申請書が作成でき、作成した申請書をアップロードすると、そのまま申請書のフォームが作れるなど、紙媒体時の見た目を保てることも特徴です。
SharePoint と連携すると、自身の申請・状況が画面上に表示されるため、承認の滞留も防げます。またオプションで Teams と連携すれば、承認依頼の通知を飛ばすことができるため、外出先などでメールを見逃すこともありません。
コラボフローで作成し、PowerAutomate を経由して完成したものを SharePoint に保存することも可能です。コラボフローで作成・承認された申請書や規定などを、SharePoint 上で管理するという使い方がおすすめです。
なお、SharePoint ワークフローは2026年4月2日に廃止となることが決定しており、マイクロソフト社は、PowerAutomate か、サポートされている他のソリューションに移行することを勧めています。
SharePoint とワークフロー専用システムを併用した活用事例
SharePoint とワークフロー専用システムを併用した活用事例として、大阪府にある堺アルミ株式会社さまの事例をご紹介します。
堺アルミさまは、もともとはワークフローを SharePoint で利用していました。しかし社内にIT部門がなくワークフロー構築の難易度が高いこと、紙の書類が多いことが課題となっていました。
そこで、ペーパーレス化を目標として、ワークフローの検討を実施しました。キーワードは「簡単に扱えるシステム」です。
ISOの規定は、複数部門への承認など複雑な条件分岐をするためコラボフローを利用しています。コラボフローで承認されたISO文書はkintoneに格納され、格納されたものをGaroonのポータル画面に表示という形という流れにしました。
承認状況が分かるようになったことで、重要情報を閲覧していない従業員への注意喚起ができるようになりました。紙の書類を探す時間や確認の遅延がなくなったことにより、1件につき5分、年間で500時間のコスト削減に成功しています。
詳しい内容は下記リンク先よりご参照ください。
まとめ
SharePoint はシンプルなワークフローを作成するのに適しています。もし複雑なワークフローを作成する場合には、他ツールとうまく連携すると良いでしょう。
JBCCはMicrosoft Awardを2021年度より3年連続で受賞。米国マイクロソフトのパートナーアワードにおいてファイナリストに選出されるなど、マイクロソフト社から評価されている企業です。
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