Boxで実現するクラウドファイル共有。基本機能や料金プランを徹底解説
Boxは米国発の容量無制限のクラウドストレージサービスです。2005年のサービス開始以来、世界中で活用が進んでいます。
企業が保有・管理するデータ量は年々増え続け、オンプレミスのファイルサーバーやNAS(Network Attached Storage)では、利用者のニーズに柔軟に応えることが難しくなりつつあります。
Boxは個人向けをはじめ、企業向けに複数のプランを提供しており、企業が抱えるデータ管理・ファイル共有の課題を柔軟に解決可能です。本記事ではBoxの機能や料金プラン、導入にあたっての注意点について詳しく解説をしていきます。
Box(ボックス)とは
BoxはアメリカのBox, Inc.が提供するクラウドストレージサービス(オンラインストレージサービス)です。主な機能には以下の7つがあります。
- ファイル共有
- Box上に文章やエクセルのファイルをアップロードすることで、メンバー間でファイルの閲覧や編集を行えます。
- ファイル管理
- Boxは一般的なPCのファイル管理システムと同じ階層構造となっており、フォルダを作成して、ファイルの整理やアクセス権限の管理が可能です。また全てのプランで容量無制限で利用できます。
- セキュリティ
- 7段階のきめ細やかなアクセス制御や、ランサムウェアの検知機能などのセキュリティ対策機能が提供されています。
- ホワイトボード
- Box CanvasはBoxの仮想ホワイトボード機能です。リアルタイムに画面を共有しながら、画面上に表示されたホワイトボードで文字・図形・付箋などを共同編集できます。
- ワークフロー効率化
- Boxでは、ワークフローをテンプレート化して、業務効率化を行うBox Relayというサービスが提供されています。契約レビューや経費申請といった反復プロセスを自動化可能です。
- 電子署名
- Box Signという電子署名サービスが提供されています。オンライン上でドキュメントの送信と電子署名を行えます。
- ドキュメント共同編集
- BoxではOffice製品のファイル(WordやExcel)をリアルタイムで共同編集可能です。
Boxはクラウドストレージが中心のサービスですが、ホワイトボード・電子署名など企業活動を効率化する様々な機能が充実しています。個人単位の無料プランも提供されており、最大10GBまで利用可能です。
顧客企業数100,000以上、67%がフォーチュン500企業
Boxは2023年5月現在、グローバルでの顧客企業数が10万社を越えており、その67%がフォーチュン500企業に選ばれています。汎用的な機能を多く備えていることから、領域・業種問わず利用が進んでおり、実績豊富で信頼感のあるサービスなのが特徴です。
主な導入企業・組織:アストラゼネカ、モルガン・スタンレー、オリンパス、ロンドン警視庁、国連財団、ドバイ空港など
日本の官公庁での活用実績
Boxは、高いセキュリティ対策が求められる官公庁での活用実績も豊富です。国の行政機関では文部科学省や内閣官房での採用実績があります。地方自治体では岐阜県や広島県がDX・ICT改革をテーマにBoxを採用しています。
Boxの基本機能
Boxの機能について詳しく説明していきます。
ファイル共有
Boxにアップロードしたファイルは、Boxを使っていないユーザーも閲覧可能なリンクを発行できます。サイズの大きな画像や動画など、あらゆる種類のファイルを柔軟に共有可能です。
- リンク共有のON/OFF
- Boxではファイル単位でリンク共有のON/OFFを設定できます。
- 共有範囲の設定
- 共有リンクの閲覧に対して、特定のユーザーのみのアクセス権限なのか、リンクを知っている誰もがアクセスできるのかを設定できます。
- パスワード保護
- 共有したリンクに対してパスワードを設定することで、URLだけを知っている人のファイルへのアクセス制限を行えます。
- ダウンロード制限
- ブラウザ上でファイルを閲覧することはできても、ダウンロードを行えないように制限します。
- リンクの有効期限の設定
- 共有リンクに対して有効期限を設定することで、一定期間が過ぎるとファイルへのアクセスが制限されます。
- リンクのURLカスタマイズ
- 共有リンクの末尾を12〜30文字以内で任意の文字列に変更できます。
- 更新履歴の管理
- ファイルに追記、編集、名前変更、移動を行なった人の履歴を自動で保存し、共有している全員のデバイスでリアルタイムに同期します。
- 書き込み・読み込み権限の設定
- フォルダの共有にあたって、ファイルへの書き込みと読込等、7段階のきめ細やかなアクセス権限を、サブフォルダ・ファイル単位で設定可能です。
ファイル管理
Boxはファイル管理の機能も優れています。
- フォルダ管理
- Boxのファイル管理は、階層構造化されたフォルダ形式で行われます。
- マルチデバイス
- Boxはブラウザだけでなく、デスクトップ、スマートフォン向けのクライアントアプリも用意されており、複数のデバイスから同じファイルにアクセス可能です。クライアントアプリを利用することでオフラインアクセスも可能です。
- 自動同期
- フォルダやファイルに変更が発生すると、共有対象のすべてのデバイスに対してリアルタイムに同期が行われます。
- バージョン管理
- ファイルに変更が発生すると、その変更が記録されます。過去のバージョンを閲覧したい場合、ワンクリックで過去のバージョンを復元可能です。
- ごみ箱
- Boxでは削除されたファイルは一旦ゴミ箱に移動し、完全に削除しない限りゴミ箱に残ります。
セキュリティ
Boxのセキュリティ機能にはゼロトラストの考え方が多く取り入れられています。
ゼロトラストは、ネットワークセキュリティの一つの考え方で、内部ネットワークにいるユーザーやデバイスにも信用を置かず、全てのアクセスリクエストに対して確認と認証を求めるものです。このアプローチの基本理念は「信用せず、常に確認せよ」です。
従来のセキュリティ対策は、信頼された内部ネットワークと外部の世界を分ける「境界型」のアプローチでしたが、内部侵害のリスクやリモートワークの普及により、その限界が指摘されています。
ゼロトラストでは、全てのトラフィックは潜在的な脅威と見なされます。そして各ユーザーのアイデンティティを確認し、アクセスするシステムやデータへの権限を厳格に制御します。これにより、セキュリティリスクを大幅に低減可能です。
このようなセキュリティを実現するためにBoxでは以下のような機能が提供されています。
- 二要素認証・シングルサインオン
- Boxユーザーに対してユーザー名・パスワード以外の認証方式を用いることで、不正アクセスのリスクを減らせます。
- 暗号化
- BoxではTLS1.2と呼ばれる暗号化通信の使用を用いて、転送データを暗号化しています。
- アクセス制限
- Boxではファイルに対して7段階のアクセス制限を設定可能です。また、万が一デバイスを紛失してしまってもアカウントを停止することでデータの漏洩リスクを最小限に抑えることが可能です。
- セキュリティログ
- Boxでは管理者によるBox設定の変更について、誰がいつどのような変更を行ったのか、すべての操作ログが保存されています。
- ランサムウェア対策
- 万が一、ランサムウェアに感染してしまった場合、管理者に通知しファイルの共有を停止します。これにより感染拡大を最小限に抑えます。ファイルは世代別に管理されているため、感染前の常態に戻すことが可能です。
- 内部不正対策
- 退職予定者による大量のデータダウンロードなど、怪しい動きを検知し管理者に通知します。
ホワイトボード(Box Canvas)
Box Canvasは、仮想的なホワイトボードです。日本では2023年4月26日から順次リリースが開始されています。テンプレートを用いて瞬時に始められ、リアルタイムでの通知やメンション、付箋ノートやコメント、絵文字を使った投票などでのフィードバックも可能です。
ワークフロー効率化(Box Relay)
Box Relayは、ビジネスプロセスを電子化、自動化、迅速化するツールです。これにより、書類確認や承認などの業務プロセスがテレワーク環境化でもスムーズに行えます。(ビジネスプランのみで利用可能)多くのワークフローテンプレートが用意されているため、簡単にはじめられる点もメリットです。経費精算や予算の承認などで、承認が完了時にメールやスラックで通知を飛ばすこともできます。
電子署名(Box Sign)
Boxの電子署名サービスはBox Signというサービス名で提供されています。署名リクエストの送信から署名、署名されたドキュメントの保管までの全プロセスをBox上で行えます。デバイス種類を問わず署名可能で、署名者はBoxアカウントを持っていなくても署名できます。また、APIを利用した拡張性があり、サードパーティアプリやSalesforceとも連携可能です。
ドキュメント共同編集(Box Notes)
Box Notesは、Boxのドキュメント作成ツールです。複数メンバーで同時に編集可能で、ミーティングの議事録作成、チームでのブレインストーミング、業務マニュアルなどの情報共有に便利です。
Boxの特徴とメリット
Boxの強みとなる特徴やメリットについて紹介します。
120種類以上のファイル形式をオンラインプレビュー・編集可能
BoxではローカルPCにファイルをダウンロードすることなく、アプリ上でファイルの閲覧や編集を行えます。ファイル形式は120種類以上に対応しており、WordやExcelといったファイル形式だけでなく、画像や動画にも対応しています。音声や動画ファイルはBox上で再生することも可能です。
容量無制限
Boxの有料プランではファイルの保存容量が無制限です。オンプレミスのファイルストレージではファイルの増減に併せて、キャパシティプランニングを行い、ハードウェアの調達等も必要でした。Boxではそのようなファイルサイズに悩むことなく、大容量のファイル保存や転送を行えます。
充実のセキュリティ対策
前述しているようにBoxはゼロトラストをベースに、セキュリティ対策が非常に充実しています。特に以下の5つの機能はBoxのセキュリティ対策の評価を高めています。
7段階のアクセス権限
Boxは以下の7段階のアクセス権限があります。
- 編集者: フォルダやファイルに対する全ての読み取り/書き込み権限
- ビューアー: フォルダやファイルに対する読み取り権限
- プレビューアー: 限定的な読み取り権限
- アップローダー: 限定的な書き込み権限
- ビューアー/アップローダー: 読み取り権限と限定的な書き込み権限
- プレビューアー/アップローダー: 限定的な読み取り権限と書き込み権限
- 共同所有者: 編集者と同じ権限を持ち、さらに高度なフォルダ設定の変更が可能
上記の中で、「共同所有者」「編集者」のみが管理対象・外部ユーザーにフォルダの権限を追加できます。
アクセスログ機能
Boxでは管理者による設定変更やユーザー行動などのログ管理機能が充実しています。
「セキュリティログ」は、管理コンソールの設定変更を追跡し、どの設定が誰によって変更されたかを特定します。この機能は、複数の管理者の操作を監視し追跡するのに有効です。
ユーザー行動は、セキュリティ以外にも例えばフォルダのクリーンアップをする際に便利で、誰もアクセスしていない古いファイルやフォルダがあれば削除を検討できます。さらに、使用状況の統計はダウンロード可能なExcelスプレッドシートにエクスポートすることも可能です。
ファイルの暗号化
Boxはファイルの暗号化機能も充実しており、アップロードされたコンテンツはTLS 1.2や256ビットAES暗号の技術で保護されています。
また、ユーザー側で暗号化キーを管理するBox KeySafeというオプションサービスや、ダウンロードしたファイルを自動暗号化するDataClasysとの連携オプションも提供しており、情報漏洩の防止と安全なファイル共有を実現しています。
ランサムウェア対策
まず、Boxを介してランサムウェアが拡散することはありません。ファイルは保存時に暗号化され、プログラムの実行環境もないためです。また、ファイルがランサムウェアに感染した場合は、管理者にアラートを発し、ファイル共有を停止することで、共有による感染拡大を最小限に押さえます。さらに、以前のバージョンを使用し感染前の常態に戻すことが可能です。
内部不正対策
Boxは内部不正対策の機能も搭載しています。具体的には、たとえば退職予定者が顧客データや機密データを大量にダウンロードしているといった、振る舞いを検知。管理者に通知します。
1,500以上の業務アプリとの連携
Boxは、1,500以上の業務アプリとの連携が実現可能です。以下は一例です。
- オフィスツール(Microsoft 365やGoogle Workspaceなど)
- プロジェクト管理ツール(Slack、Asana、Trelloなど)
- CRMツール(Salesforceなど)
- ビデオ会議ツール(Zoom、WebExなど)
- ERPシステム(SAP、Oracleなど)
アプリ連携は、基本的には画面の指示に従って数回クリックするだけで実装可能です。
Boxの料金プラン
Boxでは、企業向けに5つのプランが提供されています。契約はユーザー数単位での従量課金です。
プラン名 | Business | Business Plus | Enterprise | Enterprise Plus |
---|---|---|---|---|
料金1 ユーザーあたり |
1,800円 | 3,000円 | 4,200円 | 要問い合わせ |
主な特徴 |
Business Starterの全機能に加えて: ・データ漏洩防止 ・詳細なレポート生成(ユーザー、セキュリティ) |
Businessの全機能に加えて: ・高度な検索フィルター ・メタデータ/メタデータテンプレートのカスタマイズ |
Business Plusの全機能に加えて: ・HIPAA/FedRAMPコンプライアンス ・電子透かし埋め込み ・外部ユーザーの二要素認証 ・パスワードポリシーの施行 |
Enterpriseの全機能に加えて: Box Shield Box Governance Box Sign Box Canvas Box Relay Box Shuttle Box Platform Box AI |
ストレージ容量 | 上限なし | 上限なし | 上限なし | 上限なし |
単一ファイルのアップロード容量上限 | 5GB | 15GB | 50GB | 150GB |
バージョン履歴 | 50 | 50 | 100 | 上限なし |
最小ユーザー数 |
5 ※但し、社員数が501名以上は20以上となります。 |
5 ※但し、社員数が501名以上は20以上となります。 |
5 ※但し、社員数が501名以上は20以上となります。 |
要相談 |
最大ユーザー数 | 上限なし | 上限なし | 上限なし | 上限なし |
企業がBoxを導入するうえでの注意点
Boxの導入によって、オンプレミスのファイルストレージ管理に比べて、非常に効率的な運用が可能です。業務効率化や生産性向上、リモートワーク対応が期待できますが、場合によっては自社のニーズに沿わない可能性も考えられます。以下ではBox導入にあたっての注意点を紹介します。
直接契約の場合サポートは英語のみ対応
Box Japanからの直接契約は、Webから直接契約ができ、すぐに使えるというメリットはありますが、デメリットとして、すべての対応が英語であり、問い合わせはメールのみ、そして支払い方法がクレジットカードのみという制限があります。英語に不慣れな場合や、電話対応や銀行振込を望む場合は、直接契約は向いていません。日本語でのコミュニケーションを行いたい場合、日本の代理店経由での契約が必要です。
1ファイルあたりにアップロードできるファイル容量の制限
Boxではプラン毎に同時にアップロード可能な単一ファイルの容量制限が決められています(2GB〜150GB)。例えば動画や図面などの画像、数100万件に及ぶ顧客情報等ではファイルサイズが数GBを越えることも考えられます。このような大容量のファイルを頻繁に取り扱う可能性がある場合、契約しようとしているプランが要件を満たすか必ず確認しましょう。
マクロファイルが動かなくなる可能性
Boxはセキュリティを強化しているため、保存したすべてのファイルが暗号化されています。Excelのマクロファイルなどを多く使っている場合、リンクの書き換えが必要になったり、もしくは動かなくなったりする可能性もあるため注意が必要です。
セキュリティ機能はプランごとに異なる
金額の低いBusinessプランでも組織内ユーザーに対してはSSLおよび保存データ暗号化や二要素認証といった基本的な機能は提供されています。しかし、細かなセキュリティニーズに対応するため、下のような機能では、上位プランの契約が必要です。
- ユーザーアクティビティの完全な追跡:Business Plus以上
- 外部ユーザーに対する二要素認証やパスワードポリシーの設定:EnterpriseもしくはEnterprise Plus
セキュリティ対策はかけられる予算とニーズのバランスの見極めが肝要となるため、導入検討時に自社のセキュリティポリシーを必ず確認の上、プランの検討を行いましょう。
JBCCのファイルサーバーワークショップ
前述したようにBoxは豊富な機能と信頼性を兼ね備え、世界中の多くの企業に導入・活用されています。一方で機能も非常に多岐にわたることから、活用しきるには一定の知識や理解も求められます。
JBCCではこれからクラウドストレージを検討される企業向けに「ファイルサーバーワークショップ」を開催しています。
ファイルサーバーワークショップは、ストレージを熟知したスペシャリスト(エヴァンジェリスト)が、現行のファイルサーバーの使用状況や問題を評価し、最適な移行先を提案するプログラムです。
リプレース時期のファイルサーバーの使用継続やオンラインストレージへの移行、オンラインストレージの選択基準、クラウド製品の使用に関する疑問などを抱えるお客様に対して中立的な立場から提案します。
\YouTubeチャンネルでご紹介中/
およそ5分で分かる!オンラインストレージの選び方
コラボレーションエバンジェリスト 齊藤 晃介 が担当します。
齊藤 晃介
JBCC株式会社 コラボレーションエバンジェリスト
経歴
2000年入社~現在。旧JBCCブランド「俺のクラウド」企画メンバー。
現在はコラボレーションエバンジェリストとして社内外で活動中。ワークショップ等で数多くのファシリテーターを担当。
資格
・Dropbox Certified Seller認定
・Box Japan Certified Sales認定
・AWSソリューションアーキテクト
・CompTIA Network+
・CompTIA Server+ Certification
以下のページで動画付きで解説していますので、ぜひご覧ください。
ファイルサーバーワークショップ
JBCCでは現在オンラインストレージを活用しており、そのノウハウをお客様へ提供するワークショップを展開しています。マルチベンダーなので、セキュリティ対策も含めたお客様のご要望に合わせた最適なサービスの提案が可能です。まずはお気軽にワークショップにお申し込みください。
詳細を見る企業のIT活用をトータルサービスで全国各地よりサポートします。
JBCC株式会社は、クラウド・セキュリティ・超高速開発を中心に、システムの設計から構築・運用までを一貫して手掛けるITサービス企業です。DXを最速で実現させ、変革を支援するために、技術と熱い想いで、お客様と共に挑みます。