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2026年06月23日

2026年06月23日

電子カルテ選びの新基準:医療DXを加速させる「クラウドネイティブ」への移行

電子カルテ選びの新基準:医療DXを加速させる「クラウドネイティブ」への移行

超高齢社会の日本で、持続可能な医療体制を築く鍵となる「医療DX」。2027年の情報共有サービス稼働やクラウド化など政府の取り組みが加速しています。本記事では、医療DXの最新進捗や「3文書6情報」の共有、標準型電子カルテの動向を詳説。2026年3月25日にJBCCが開催したイベントでの講演内容をもとに、クラウドネイティブ型電子カルテ「blanc」の対応状況と、変化の激しい医療DXの最前線を凝縮してお届けします。

亀田医療情報株式会社 塚⽥ 智 氏

塚⽥ 智 氏

亀田医療情報株式会社 取締役
診療放射線技師、情報処理システム監査技術者、診療情報管理士

日本IBM勤務後、電子カルテメーカーを立ち上げ、医療ITの推進注力している

この記事の目次

超高齢化社会に向けて、政府が強力に推進する医療DX

日本は世界に先駆けて超高齢社会に直面しています。そのため健康寿命の延伸と持続可能な社会保障制度の構築により、将来にわたって安心して暮らせる社会を作る必要があります。

こうした中、政府は医療サービスの効率化と質の向上を目的とした「医療DX」を推進しています。その実現に向け、2023年に以下の4項目を柱とする工程表が発表されました。

  • マイナンバーカードと健康保険証の一体化の加速等
  • 医療情報共有の拡大(医療機関・薬局間での共有、マイナポータルでの閲覧可能情報の拡充)
  • 共有範囲のさらなる拡大(自治体・介護事業所との共有、マイナポータルにおいて申請情報の入力機能の追加)
  • 診療報酬改定DX(医療機関等のシステムについて、共通算定モジュールの活用による抜本的なモダン化)

この2と3の実現に向けて、「全国医療情報プラットフォームの構築」が進められています。
工程表に対して、私が進捗を赤い丸で評価したのが次の図です。

「医療DXの推進に関する工程表(全体像)」

出典:「医療DXの推進に関する工程表(全体像)」(令和5年6月2日 医療DX推進本部決定)をもとに亀田医療情報株式会社作成
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/iryou_dx_suishin/index.html

進捗については一部に遅れが見られるものの、これほど大規模な国家プロジェクトとしては概ね順調と言えるでしょう。

医療DX システムを実装する8領域の最前線

医療DXの工程表をシステム実装に落とし込むと、次の8領域になります。

  • オンライン資格確認
  • 薬剤情報等
  • 電子処方箋
  • 電子カルテ情報共有サービス
  • 標準型電子カルテ
  • 救急時医療情報閲覧
  • 予防接種登録・感染症報告
  • 共通算定モジュール

それぞれの領域で今、どのような進捗になっているかをご紹介します。

1. オンライン資格確認

オンライン資格確認については、全医療機関で義務化されています。クリニックに行くと資格確認の機器を見かけるようになり、それなりに便利になっていると実感できる状態になりつつあります。

2. 薬剤情報等

オンライン資格確認をすると薬剤情報が参照できる機能です。こちらも多くの医療機関で使用しており、普及率は高いと言えます。

3. 電子処方箋

導入率は薬局の9割に対し、病院は2割にとどまっています。月間で7000万枚ある処方箋のうち、電子化されているのは、わずか40万枚と推定されており、利用率はかなり低いです。※2025年3月時点

4. 電子カルテ情報共有サービス

全国の医療機関において、電子カルテ情報を共有・閲覧できるようにするサービスです。全国10地域でモデル事業を実施して検証しており、2027年2月に稼働予定です。

5. 標準型電子カルテ

政府は遅くとも2030年には概ね全ての医療機関において「標準仕様に即した」電子カルテ、つまり標準型電子カルテの導入を目標として掲げています。

6. 救急時医療情報閲覧

救急の際に、医療情報を参照できる仕組みです。このサービスはある程度は普及していますが、現時点ではマイナンバーがわからないと参照できないという制約がかかっています。また消防庁の持つ救急車の情報と連携する必要もあります。ただ、仕組み自体は難しいものではなく、時間をかけずに進めることができると見られています。

7. 予防接種登録・感染症報告

今まで介護、医療、自治体のシステムが相互に連携できていなかった部分です。2026年4月から順次開始予定となっており、現在は特定の自治体、介護事業者などで個別の取り組みが始まっています。これを医療にも広げていく必要があり、普及にはかなり時間がかかります。

8. 医事会計に関する共通算定モジュール

2026年6月から利用開始予定となっています。日本医師会が提供している日医標準レセプトソフト「ORCA(オルカ)」で一部利用するという話も出てきており、実現すれば急激に実用化が進むでしょう。2026年6月時点でORCAがどのような対応をするかを注視していきたいと思います。

次の章から、「4. 電子カルテ情報共有サービス」「5. 標準型電子カルテ」についてさらに詳しく解説していきます。

医療DXの核心「電子カルテ情報共有サービス」:2027年、全国の病院がデータでつながる

先ほどご紹介したように、電子カルテ情報共有サービスは、全国の医療機関等で、電子カルテの情報を共有・閲覧できるようにするサービスです。各医療機関から電子カルテ情報共有サービスに必要な情報が連携され、全国の医療機関等、医療保険者、一般の人が情報を閲覧できるようにするものです。

電子カルテ情報共有サービスの目指す「3文書6情報」の共有

2027年2月に稼働を予定している電子カルテ情報共有サービスには、次の目的があります。

  • 医療機関の間で診療情報提供書や検査結果等を電子的に共有
  • 医療機関から医療保険者に健診結果報告書の情報を提供
  • 患者が自身のマイナポータルで健診結果報告書等の情報を閲覧
電子カルテ情報共有サービス

出典:第26回 医療等情報利活用WG 資料(厚生労働省)をもとに亀田医療情報株式会社作成
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66052.html

電子カルテ情報共有サービスの目標は、3文書6情報を提供することです。

3文書:

  • 診療情報提供書
  • 退院時サマリー
  • 健診結果報告書

6情報:

  • 検査(救急、生活習慣病に関する項目)
  • 感染症
  • 処方
  • 傷病名
  • 薬剤アレルギー等
  • その他アレルギー等

これは非常に良い取り組みで、これだけの情報を全国の病院で共有できれば、初診時、救急時に役立ちます。政府は良い所に目をつけたと思います。

医療情報交換の標準化:次世代規格「HL7 FHIR」への移行と現状

さらに、各医療機関と「電子カルテ情報共有サービス」との連携において、国際標準規格である「HL7 FHIR(ファイアー)」のリソースを用いた標準化が進められています。これまで日本では普及しなかったFHIRをあえて採用し、日本独自規格に固執しないという決断は、極めて画期的なものです。

約3年にわたる検討を経て、現在は技術解説書の公開やテストサイトの稼働など、システム基盤は整備されつつあります。これを受け、亀田医療情報株式会社(KHI)が提供するクラウドネイティブ型電子カルテ「blanc(ブラン)」においても、最新仕様を反映した対応を進めています。

対応するベンダーの立場としては一刻も早い標準仕様の確定が待たれるところですが、全面的なスタートにはまだ時間を要しているのが現状です。

モデル事業の進捗と顕在化する課題

現在、全国10地域で電子カルテ情報共有サービスのモデル事業が実施されています。厚生労働省「健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ」(第26回〜第28回)での報告に基づき、現在の進捗状況を解説します。

本事業ではシステムの実装のみならず、現場の運用や業務フローの検証も行っています。しかし、約1年前から先行しているのは愛知県の藤田医科大学病院グループのみで、残りの9地域については開始から半年足らずというのが実状です。2025年度末時点の報告によると、これら9地域では、運用開始に伴い多くの課題が顕在化しています。2027年2月の本格稼働を予定していますが、計画通り「3文書6情報」が完全に情報共有できるか、予断を許さない状況です。

医療DXの基盤となる「標準型電子カルテ」:施策と実装の展望

電子カルテは情報共有のための不可欠な基盤です。前章でご紹介した電子カルテ情報共有サービスは、電子カルテを普及させないとデータが集まらず、参照もできないからです。そのため国が推進する「標準型電子カルテ」は、業務効率化ではなく、医療情報の円滑な共有を目的として設計されています。

標準型電子カルテで国が行っている取り組みは、次の2つです。

  • 「標準型電子カルテ(導入版)」の開発
  • 「一般病院向け」「クリニック/中小病院向け」標準仕様の策定

「標準型電子カルテ(導入版)」とは

「標準型電子カルテ(導入版)」は、民間企業の電子カルテ導入が困難なクリニックを対象に、最低限の情報連携を実現するための仕組みです。紙カルテによる運用を維持したまま、「診療情報提供書」や「検査データ」の閲覧、および「電子処方箋」の発行や提供書の送付が可能となります。さらに、自院の検査データを「電子カルテ情報共有サービス」へ登録する機能も備えています。

本システムは国が主導して開発を進めており、2026年度中の運用開始を予定しています。しかし、開発着手からすでに2年が経過しており、最終的にどこまでの機能が実装されるかは依然として不透明な状況です。

「一般病院向け」「クリニック/中小病院向け」の標準仕様を策定

国が策定した標準仕様をもとに、民間企業がクラウドネイティブ型の電子カルテを開発します。標準仕様には、「一般病院向け」「クリニック/中小病院向け」があります。

一般病院向け

「病院向け」は2025年度中に標準仕様を策定し、2026年度から民間企業が開発に着手します。
標準仕様のポイントは「部門システムAPIの標準化」「全国医療情報プラットフォームへのクラウド間連携」「部門システムのクラウド化」「データ移行の標準化」です。

  • 部門システムAPIの標準化
    標準仕様書には、部門システムとの接続仕様を標準化することが明記されています。2027年度までに各部門システムごとに標準インターフェースを策定し、2028年以降に各製品へ実装することを目指しています。
    それに伴い、コード・マスタを標準化します。コード・マスタを変えていくのは非常に負荷がかかる取り組みです。野心的な取り組みですが、どこまでできるかは不透明です。
  • 全国医療情報プラットフォームへのクラウド間連携出し
    オンライン資格システム、電子処方箋などの医療DXへの連携はクラウド間で接続する方針を掲げています。
  • 部門システムのクラウド化
    電子カルテだけをクラウド化してもオンプレミスの部門システムが残り続けることになり、中途半端な状態になってしまいます。そのため各部門システムを順次クラウド化することを規定しています。
  • データ移行の標準化
    データ移行をする際のエクスポートの仕様を標準化します。
クラウドネイティブな電子カルテ開発に向けた取組【病院】

出典:第28回 WG 資料(厚生労働省)をもとに亀田医療情報株式会社作成
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70613.html

クリニック/中小病院向け

策定した標準仕様に基づき、民間企業がクラウド型電子カルテを開発します。開発した電子カルテについては、今後、厚生労働省が認証を行うことを想定しています。
2026年3月時点で標準仕様書についてパブリックコメントを反映した説明会があり、3月末時点で標準仕様書の正式版が公開されます。その中身についていくつか解説してきましょう。

  • 機能要件
    「オンライン資格確認システム」「電子処方箋管理サービス」「電子カルテ情報共有サービス」という政府の医療DXサービス群との連携が求められます。
  • セキュリティ
    セキュリティにかなり気を使っています。求められるセキュリティ基準に準拠するにはハードルが高く、クラウドでしか対応できません。当社でもいくつか対応できていない部分があり、今後1年かけて対応していきたいと考えています。
  • 情報公開
    ベンダーは電子カルテの価格などの情報を自社で運営するWebサイト上に公表することが求められています。

期限が迫る!標準型電子カルテの導入

「標準型電子カルテ(導入版)」は電子カルテが導入困難なクリニック向けのシステムです。それ以外の一般病院・クリニックにおいては、国が策定した標準仕様に対応した電子カルテを導入する必要があります。

一般病院に求められる対応

オンプレミスの電子カルテを導入している場合

次期システム更改時に、電子カルテ共有サービス、電子処方箋に接続する機能を追加すること。

クラウド型の電子カルテを導入している場合

2027年度までにクラウドサービス側で、標準仕様に対応すること。

電子カルテ未導入の場合

2027年度までに、標準仕様に対応したクラウド型電子カルテを導入すること。

クリニックに求められる対応

オンプレミスの電子カルテを導入している場合

次期システム更改時に標準仕様に準拠したクラウド型電子カルテを導入すること。

クラウド型の電子カルテを導入している場合

電子カルテ共有サービス、電子処方箋に接続する機能を順次追加すること。さらに2027年度から2028年度にかけて、標準仕様に準拠したクラウド型システムに移行すること。

電子カルテ未導入の場合

「標準型電子カルテ(導入版)」または民間企業が開発する標準仕様に準拠したクラウドネイティブ型電子カルテを導入すること。

電子カルテ・電子カルテ情報共有サービスの普及について

出典:第28回 WG 資料(厚生労働省)をもとに亀田医療情報株式会社作成
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70613.html

厚労省・デジタル庁の検討会に参画する電子カルテベンダーの知見を凝縮。医療DXを強力にバックアップするクラウドネイティブ型電子カルテ「blanc」

亀田医療情報株式会社(KHI)では、厚生労働省の非公開会議や、デジタル庁の「標準型電子カルテα版」改修プロダクトワーキンググループ(PWG)などに参画し、ベンダーの立場から提言を行ってきました。
こうした活動を踏まえ、提供するクラウドネイティブ型電子カルテ「blanc」においても最新情報を元に対応を行っています。

オンライン資格確認

対応済みで、多数の実績があります。

薬剤情報等

対応済みで、多数の実績があります。

電子処方箋

対応済みで、6施設において実績があります。

電子カルテ情報共有サービス

以下について対応済みです。

  • 3文書6情報の参照
  • 診療情報提供書作成・登録
  • 退院時サマリー作成・登録
  • 5情報登録

標準型電子カルテ

標準仕様書を確認中で、正式な公開を持って対応します。

救急時医療情報閲覧

対応済みで、3施設において実績があります。

予防接種登録 感染症報告

非対応。状況に合わせて対応します。

共通算定モジュール

医事システムの範囲であるため、対象外です。

未対応の領域についても、国の標準仕様の公開に合わせて迅速に実装を進める体制を整えています。政策の動向をいち早く製品へ反映させ、医療機関の皆様が安心してDXへと踏み出せる環境を提供しています。

医療DXが推進するクラウドネイティブ型への転換

2023年、「標準型電子カルテ」の構想と同時に「クラウド化」の方針が打ち出され、地域医療介護総合確保法に規定が追加されました。当時、クラウド化の必要性について議論がありましたが、最新の技術動向を鑑みれば「クラウドファースト」は抗えない潮流です。他産業と比較して遅れている医療ITのクラウド移行について、デジタル庁の担当者も「この機会にクラウド化を定着させたい」との意向を示しています。

この方針は、極めて正しい方向性だと言えます。標準仕様への対応をオンプレミス環境の個別プログラムで実施するのは、多大な手間とコストを要します。クラウド型であれば、サービス提供者側が一括してアップデートを行うため、医療現場の負担を最小限に抑えることが可能です。今後の医療DXのさらなる発展において、クラウドネイティブな技術の活用は不可欠な要素となるでしょう。

まとめ:医療DXのさらなる発展に向けて

ここまで、医療DXの最新動向とクラウドネイティブ型電子カルテ「blanc」の対応状況について解説してきました。本記事は、2026年3月25日にJBCCが開催した「第22回 JBHC総会(JBCCヘルスケアコンソーシアム)」における私の講演内容を、医療機関の皆様向けに再構成したものです。

亀田医療情報株式会社は、こうしたイベントを通じてJBCCと密に最新情報を共有し、当社の製品開発やJBCCのサポート体制へと反映させています。私たちは「製販一体」となって、医療DXのさらなる発展に邁進しています。「電子カルテ導入のタイミングを測りかねている」とお悩みのお客様は、ぜひ一度、JBCCまでお気軽にご相談ください。

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クラウドカルテ「blanc(ブラン)」


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【クラウドカルテ「blanc」導入事例】医療法人 須藤会 土佐病院 様


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