電子カルテ新規導入の流れと必要な準備とは

- 電子カルテ導入の全体的な流れと各ステップでの病院・ベンダーの役割
- 導入に必要な資料・体制・場所・備品など、病院側で準備すべき具体的項目
- 導入時の課題に対する対応策や、クラウド活用・研修強化による解決方法
電子カルテを新規導入する場合、どのような流れで導入を進めていくのか、また、病院側に必要になる準備にはどういったものがあるのか、弊社の導入ケースをご紹介します。
導入までの流れ
導入までのおおまかな流れは下記になります。
- 運用検討
- マスター設定
- 操作研修
- 稼働準備
- 稼働判定
- 新システム稼働
それぞれについて具体的にご説明していきます。
1.運用検討
<ベンダー>
病院の各部門担当者に現行業務の聞き取りを行います。現行業務の運用を把握したうえで、電子カルテのどの機能で対応するのが効率的かを検討し、新運用フローを決定します。
<病院>
事前に配られる業務把握シートに記入をしたり、現行業務の聞き取り打ち合わせに参加したり、検討ワーキングへの参加・運用課題の決定をおこないます。
2.マスター設定
<ベンダー>
運用設計した情報をもとに各種マスターの設定とカルテ書式・テンプレートの作成を行います。各種マスター作成方法の教育を各部門のマスター担当者に実施します。
カルテ内の文書作成や登録に関わる機能についての教育を行います。
担当者のレベルに合わせて、必要なフォローを行います。
<病院>
各種オーダーに必要となるマスターに登録する内容を精査し決定します。また、カルテ内に登録する帳票が紙しかない場合は電子化したり、テンプレートを作成したりします。
3.操作研修
<ベンダー>
職種毎の操作教育を計画し、操作説明書を準備します。
病棟や部門のリーダーを対象に集合研修を行います。
<病院>
病棟や部門のリーダーは操作研修に参加し、それぞれのチームメンバーに教育を実施します。
4.稼働準備
<ベンダー>
本稼働に向けて実際の環境を使用し運用を確認します。これをリハーサルと呼んでいます。リハーサルに必要となるデータを事前に新しいカルテに移行・登録します。
外来と病棟に分けてリハーサルを計画し、新しい運用に沿った業務のシナリオ案を作成します。
<病院>
ベンダーが作成したシナリオ案を検討し決定します。
リハーサルに参加し、見えてきた運用課題について解決策を検討します。
5.稼働判定
本稼働の準備が完了しているか、課題が残っていないかベンダーと病院双方で確認し同意したうえで、本稼働予定日での稼働を行うかどうかの最終判定をします。
6.新システム稼働
ベンダー立ち合いのもと新システムを稼働します。稼働後に出てきた課題をベンダーと病院で共有し解決し、段階を追ってベンダーのサポートを減らしていきます。おおよそ約1カ月を目処に病院のみでの運用に移行します。
ではつづいて、より具体的に、病院側にはどういった準備が必要になるのかご紹介します。
電子カルテ導入に必要な準備
資料
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使っている全帳票類(紙/Excel/Word)
これは現在使っている帳票をカルテのどの機能に当てはめるか検討するために必要になります。
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加算等を算定するために利用しているゴム印等
どのような加算をとっているのか確認し、電子カルテ機能を利用するかどうか検討するために利用します。
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既存ネットワーク関連資料(配線図/既存IPアドレス一覧等)
電子カルテ導入に伴ってネットワークの見直しが必要になるので、既存ネットワークを把握する必要があります。また、電子カルテ操作に利用する新たなPC端末の導入に伴い、利用可能なIPアドレスを把握する必要があります。
体制
-
電子カルテ委員会の設置(課題に対する最終ジャッジ、月次報告)
各部門の代表者を決めて、定期的にMTGを開催します。
運用の決定や進捗状況の報告、課題の共有、解決方法の決定を行います。
病院全体に関わる課題や結論がでない課題等に対してもここで判断します。
-
業務ヒヤリングの準備(業務が分かり、ある程度決定権のある人のアサイン)
ベンダーからの業務ヒヤリングに対応する担当者を決定します。各部門の代表として、カルテ導入後の運用を決定します。
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マスター管理担当者の決定
カルテ導入時のマスター設定及び、導入後のメンテナンスを行います。
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電子カルテ障害時の対応方法/連絡ルーチン
障害時に速やかな対応をするため事前に決めて周知しておきます。
場所
-
サーバールーム
クラウドの電子カルテでない場合は電子カルテサーバーを置く場所が必要になります。
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プロジェクトルーム
SEは導入までの間、病院に常駐して作業を行います。その作業スペースの提供が必です。
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操作研修場所
操作研修は集合研修の形をとります。ある程度まとまった人数が研修を受けられる部屋が必要です。
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リハーサルスペース
特定の場所(例:体育館等)で仮部門を設け集合してリハーサルを行うのであればその場所の確保が必要になります。
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クライアントPCの設置場所等
診察室や診療科受付等、業務上電子カルテ端末が必要になる場所に設置が可能かどうか確認が必要です。
備品(タップ/LANケーブル/プリンター/スキャナー等)
電子カルテ端末が増えるということは、必要な電源、LANケーブルも増加します。処方箋や受付票の印刷をする必要がある端末には、接続するプリンターが必要になります。紙伝票(例:診療情報提供書)を電子カルテに取り込む運用の場合はスキャナーの設置も必要です。
リモート保守回線
本稼働後、電子カルテの運用が安定するとSEが常駐しなくなります。システムの更新や障害の対応など、遠隔からでも速やかに対応ができるよう、専用回線を通してサポートします。
導入のイメージは湧きましたでしょうか?
新規で電子カルテを導入するのは、大変なことだと思います。
必要な人材やスキルが揃っていないと感じる病院もあるかもしれません。
ですが、例えばサーバーを管理する人材やスペースが足りないのであれば、クラウドサービスを利用するという方法もあります。PCスキルが足りないのであれば、研修を手厚くするなどしてフォローをするとよいでしょう。
私たちとしては、少しでも病院の皆様の不安を減らして、前向きな導入ができるようお手伝いをしたいと思います。
よくある質問
- Q1. 電子カルテ導入にはどれくらいの期間がかかりますか?
- A. 病院の規模や準備状況によりますが、導入準備から本稼働まで数ヶ月を要するケースが一般的です。
稼働後も約1ヶ月間はベンダーのサポートが継続されます。
- Q2. 導入にあたって病院側で特に重要な準備は何ですか?
- A. 電子カルテ委員会の設置、業務ヒヤリング対応者の選定、マスター管理担当者の決定など、体制づくりが非常に重要です。また、帳票類やネットワーク資料の整理も欠かせません。
- Q3. クラウド型電子カルテを選ぶメリットはありますか?
- A. サーバー設置スペースや管理人材が不足している場合、クラウド型を選ぶことで物理的・人的負担を軽減できます。リモート保守回線による遠隔サポートも可能です。
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