【2025年5月更新】BCP対策でのクラウド活用とは?メリットや具体的な手順、注意点を解説

自然災害やサイバー攻撃が増加する中、BCP(事業継続計画)対策は企業にとって不可欠な取り組みです。
2024年に帝国データバンクが公表した調査では、企業のBCP策定率は約2割にとどまっています。自社でBCP対策用のITインフラの整備にはコストや運用、技術面で負担が大きく、BCP対策が十分に行われていない現状があります。
このような背景から、BCP対策に柔軟かつ迅速に対応できるクラウドサービスの活用が注目されています。クラウド導入により、災害時のデータ保全やリモートワークの実現が可能となり、BCP対策の強化につながります。デジタル庁も、官民問わずクラウドの活用を推進しており、企業のBCP対策におけるクラウド導入の重要性が増しています。
一方で、非常時においても中核業務を継続するためには、基本方針(ポリシー)を明確にし、事前に判断基準や体制を定めておくことが重要です。これにより、緊急時にも適切な判断と対応が可能となります。
本記事では、以下の2つの視点からBCP対策の進め方を解説します。
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BCP対策におけるクラウド活用の方法
クラウド導入のメリットや導入プロセス、注意点、実際の導入事例までをご紹介します。 -
BCP対策の立て方
ポリシー策定から復旧手順、社内体制の整備まで、基本ステップを6つに分けて解説します。
BCP対策の全体像を理解し、実効性を高めたい企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
【出典】
帝国データバンク 事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2024年)
デジタル庁 世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画の変更について
BCP(事業継続計画)対策とは?

BCP(Business Continuity Plan)対策とは、事業継続計画のことです。具体的には災害やテロなどの緊急事態に備え、事業を早期に立て直せるようにあらかじめ策定しておく計画のことを指します。
帝国データバンクが2022年3月に発表した「東日本大震災関連倒産動向調査(2022年)」によると、震災に関連して倒産した企業は累計2,085件にのぼります。また、売上が震災前の水準に回復した企業は全体の65%にとどまり、約4割が依然として厳しい経営状況にあることが判明しました。
さらに、国土交通省の「国土交通白書」では、M8〜9の南海トラフ地震が今後30年以内に70〜80%の確率で発生すると予測されています。企業にとって緊急事態への備えはますます重要となっており、早急なBCP対策の策定が求められています。
しかし、帝国データバンクが2024年6月に公表した「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2024年)」によると、BCPを策定している企業はわずか19.8%となっています。つまり、8割以上の企業が対策を講じていないのが現状となっているのです。対策を講じていない理由としては、策定に必要なスキルやノウハウの不足、人材の確保が難しいことなどが挙げられています。
なお、BCPとよく似た用語に「BCM(Business Continuity Management)」があります。BCMとは、BCPを有効に機能させるために、平常時から実施する訓練・教育・管理活動を含む取り組みのことを指します。BCP対策の実効性を高めるには、BCMとの連携が不可欠です。
【関連記事】改めて考える「災害対策(DR)の必要性」クラウドを活用した災害対策とは?
BCP対策にクラウドを活用するメリット

クラウドサービスは、災害などの緊急事態に備えたBCP対策を強化するうえで非常に有効です。クラウドを導入することで、万が一の事態でも業務の継続性を高めることができます。
クラウドをBCP対策に活用する主なメリットは、以下の4つです。
- 安全な環境にあるサーバーを利用できる
- バックアップで早期に復旧できる
- コスト削減と運用負荷軽減が可能になる
- 出社できない状況でも、業務を遂行できる
それぞれ解説します。
安全な環境にあるサーバーを利用できる
クラウドのデータセンターは、災害リスクの低い地域に設置されており、企業の重要データを安全に保管できます。また、地震や停電、サイバー攻撃など、さまざまなリスクに対する高度な安全対策も施されているのが特長です。
例えば、AWS(Amazon Web Services)のデータセンターでは以下のような安全対策が実施されています。
- 多要素認証を用いた厳重な入退室管理
- 24時間365日のグローバルな監視体制
- 複数拠点での冗長化
- 徹底的な障害シミュレーションの定期実施
- 自然災害発生時の自動対応設備の整備
これらの仕組みによって、緊急時でも安定した事業継続を支援しています。
バックアップで早期に復旧できる
クラウドでは、バックアップデータを自動で取得し複数の拠点に保管するため、災害時でも迅速な復旧が可能です。
例えば、東日本のデータセンターが災害で停止しても、被害を免れた西日本のデータセンターに保管されたバックアップから迅速にデータを復元できる仕組みになっています。そのため、企業は早期に業務を再開することができます。
ただし、バックアップ頻度やデータ保管拠点の構成は事業者ごとに異なるため、利用前に詳細な仕様を確認しましょう。BCP対策のためにクラウドを導入する際は、以下の点を必ずチェックしてください。
- バックアップ取得頻度(1日1回、数時間ごと、リアルタイム、など)
- バックアップ拠点の数と位置(国内・海外など)
- 災害時のデータ復元にかかる時間
コスト削減と運用負荷軽減が可能になる
クラウドを活用することで、自社で設備を保有する場合と比較して、サーバーや設備の初期投資や維持費を削減できます。また、インフラの運用・保守作業はクラウド事業者が担当するため、自社のIT担当者の負荷も軽減できます。
ただし、クラウドの料金体系は利用量に応じた従量課金制が一般的です。そのため、クラウドの利便性を最大限に活かすためには、定期的に利用状況を把握し、無駄なコストが生じないよう適切に管理することが重要です。
出社できない状況でも、業務を遂行できる
クラウドを活用すると、災害や感染症の流行などで出社が困難な場合でも、インターネットを通じて業務を継続可能です。自宅からでも業務システムにアクセスできるため、緊急時でも事業が完全に停止するリスクを避けられます。
また、クラウド環境は平常時の多様な働き方も支援します。育児や介護などで出社が難しい社員でも、無理なく業務に取り組めるテレワーク環境が整備できます。BCP対策としての事業継続性だけでなく、働き方改革の推進にも効果的です。
BCP対策のための、クラウド移行の手順

ここでは、BCP対策のためにクラウド移行する際の、基本的な流れを解説します。
- 課題の明確化
- 移行資産の棚卸と対象システム選定
- システムの設計
- サービスの選定
- 移行計画の策定
- クラウド移行の実施
- 運用開始後のテストと継続的な改善
自社だけでは難しいと感じた場合は、外部の専門家の力を借りることも選択肢の一つです。JBCCではクラウド移行のための無料相談会を実施しています。クラウド移行の支援も可能ですので、ご興味ある方はこちらのページをご覧ください。

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それぞれのポイントを解説します。
1.課題の明確化
自社のシステムが抱える課題を整理し、「クラウド移行でどのような問題を解決したいのか」を明確にしましょう。
具体的には、以下のような課題が考えられます。
- 地震や浸水などで、自社サーバーが停止するリスクがある
- 古いシステムのままで、維持管理費や担当者の負担が増えている
- セキュリティ対策が不十分で、情報漏洩が心配である
これらの課題を明確にしたら、プロジェクトチーム全員で共有し、目的への認識を統一することが重要です。
また、具体的な目標設定やクラウド移行後の効果検証のために、次のような客観的な数値を整理するとよいでしょう。
- サーバーの稼働率(障害の頻度や停止時間)
- 復旧までに許容できる時間(目標復旧時間:RTO)
- 許容できるデータ損失の範囲(目標復旧時点:RPO)
このような客観的な数値は、目標設定や、クラウド移行後の効果検証に利用できます。
2.移行資産の棚卸と対象システム選定
次に、自社で利用しているシステムやデータを整理(棚卸)し、クラウドへ移行する対象を選定します。
移行対象の選定では、以下のようなポイントを考慮します。
- 移行によって得られる効果の大きさ(課題解決への貢献度)
- 移行作業の難易度(技術的・工数的負担)
- 他システムとの連携(クラウド移行によってシステム改修が必要な場合がある)
移行対象をすべて同時にクラウドへ移すのが難しい場合は、業務への影響や重要度を踏まえて優先順位を決めておきましょう。最初は移行しやすく、業務影響が少ないシステムを優先するのがおすすめです。
3.システムの設計
次に、クラウドにどのようにシステムを移行するかを設計します。移行方法には主に次の3つがあり、自社の状況や目的に合った方法を選ぶ必要があります。
・リホスト(そのまま移行)
既存のシステムを大きく変更せず、そのままクラウドに移行します。短期間で比較的容易に移行できますが、コストや性能改善効果は限定的です。
・リファクタ(一部最適化して移行)
システムの一部をクラウド環境に合わせて最適化したうえで移行します。コスト効率や性能が改善されますが、やや手間と時間がかかります。
・リプレイス(全面クラウド化)
既存システムをクラウド向けサービスに完全に置き換えます。コストや運用効率の面で最も大きなメリットがありますが、設計や開発に時間が必要です。
それぞれの方法のメリット・デメリットを理解し、自社の状況や業務要件に適した方法を選びましょう。
4.サービスの選定
移行方法を決定したら、次に具体的なクラウドサービス(AWS、Azureなど)を決めます。サービスを選ぶ際は、自社の業務やシステムに適しているかを次のポイントで確認しましょう。
- セキュリティ対策:暗号化や認証システムなど、十分な対策をしているか。
- SLA(サービス品質保証):トラブル発生時の復旧時間やサービス品質が保証されているか。
- スケーラビリティ(拡張性):サーバーのスペックを柔軟に調整できるか。
- 災害対策:拠点の分散やバックアップなどで緊急時も安定して業務を継続できるか。
これらの基準をもとに、自社に合ったサービスを選ぶことで、スムーズで安心なクラウド運用が実現できます。
5.移行計画の策定
クラウドへの移行方針とシステム設計が決定したら、具体的な移行計画を作成します。
計画策定にあたっては、「どのシステム・データを」「いつ・どの順番で移行するか」を明確に記載し、業務への影響が最小限になるようスケジュールを調整します。移行作業の手順書作成や、関係者への共有、役割分担の確認などもこの段階で完了させておきましょう。
また、本番移行前にリハーサル(模擬テスト)を行うことも重要です。リハーサルを実施することで、作業時間を計測できるだけでなく、計画の不備やリスクを本番前に発見できます。
6.クラウド移行の実施
準備が整ったら、計画に沿ってクラウドへの移行作業を実施します。移行作業ではあらかじめ決めた手順書を忠実に守り、その場の判断で作業内容を変更しないよう徹底しましょう。万が一、手順書にない作業が必要になった場合は、作業リーダーへの確認をルール化しておくことが重要です。
移行が完了したら、すべてのシステムが正常に動作するかを入念に確認します。具体的には、業務システムへのログイン、データの読み書き、レスポンス速度など、日常業務で使用する機能の動作テストを実施します。
移行直後は予期せぬトラブルが発生する可能性があるため、数日間は特に注意深く監視します。また、重大な問題が起きてトラブルが解決できない場合に備え、迅速に元のオンプレミス環境に戻せるよう、復旧手順を明確化しておくと安心です。
7.運用開始後のテストと継続的な改善
運用開始後も、定期的にテストや監視を行い、システムが安定して稼働しているかを確認しましょう。システム利用者からのフィードバックも収集し、改善点を洗い出して随時対応します。
また、ビジネス環境や業務の変化に応じて、システムを継続的に調整することも必要です。例えば、新たな業務が追加された場合にはサーバーを増強したり、業務プロセスが変更された場合にはシステム設定を見直したりすることが考えられます。
このように継続的な改善を繰り返すことで、クラウド移行の効果を最大限に引き出すことができます。
クラウドを利用する際の課題

クラウドの導入はBCP対策として多くのメリットをもたらしますが、運用時には注意すべき課題もあります。特に以下の3つがよく挙げられます。
- インターネット障害により使用できない恐れがある
- コスト管理を徹底する必要がある
- クラウド運用に精通した人材が必要になる
上記の課題に加えて、会社の規模やIT体制によってさまざまな課題があります。そのため、クラウド移行には課題の洗い出しと、対策の立案が欠かせません。JBCCの「無料クラウド(IaaS)相談会」では、企業ごとに最適な解決策をご提案しています。クラウド移行に不安や悩みのある方は、ぜひ一度ご相談ください。
それでは、3つの課題について詳しく解説します。
インターネット障害により使用できない恐れがある
クラウドサービスはインターネット障害が発生するとアクセス不能になるリスクがあります。BCP対策としてクラウドを導入する場合は、障害時の対策を具体的に準備しておく必要があります。
例えば、複数の通信回線(有線回線とモバイル回線など)を準備し、一つの回線がダウンしても別の回線で接続できるようにする、といった方法が効果的です。
万一の場合でも業務が完全に停止しないよう複数の対策を組み合わせることが重要です。
コスト管理を徹底する必要がある

クラウドサービスは従量課金制のため、利用状況を把握していないと想定外のコストが発生する恐れがあります。代表的なコスト増加要因として、「料金体系への理解不足による設定ミス」、「リソースの過剰使用」、「為替相場の変動によるコスト増加」などが挙げられます。
こうした原因に対して、以下のような対策を講じることが重要です。
- 利用状況をリアルタイムで可視化し、不要なリソースは削除する
- クラウド利用状況の定期的な見直しや管理体制を整備する
- 監視ツールを導入し、異常なコスト増加を迅速に検知する
- クラウドサービスの料金体系や最適設定に関する社内教育を実施する
- 為替変動リスクを考慮した予算計画を立てる
なお、これらの対策にはクラウド運用に関する専門知識が求められます。専門知識を社内で十分に確保できない場合は、外部のコンサルティングサービスの活用も検討しましょう。
クラウド料金の急激な増加(クラウド破産)の対策について詳しく知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。
【関連記事】円安でクラウド破産!?ITコスト急増の今だからこそ知りたいコスト最適化に重要な3ステップ
クラウド運用に精通した人材が必要になる
クラウド環境での運用や管理方法は、従来のオンプレミスとは異なります。例えば、リソースやコストの管理、セキュリティ対応など、クラウド特有の問題への対応が求められます。そのため、クラウド運用に精通した人材が不可欠です。
自社でIT人材の確保が難しい場合は、必要に応じて外部の専門サービスの支援を受けることも検討しましょう。
クラウド利用によるBCP対策事例

クラウドは、災害や緊急事態に備えたBCP対策として、さまざまな業種・業態で活用が進んでいます。ここでは、実際にクラウドを導入してBCP対策を強化した事例を5つ紹介します。
「Microsoft Azure」を導入した大手製造業
ある大手製造業では、東日本大震災の経験を契機に、災害リスクの高い本社サーバー環境からの脱却と事業継続計画(BCP)強化を目的に、SAP基幹システムをMicrosoft Azureへ移行しました。
従来の本社サーバーは、津波や地震による被災リスクが高い地域に位置していました。そこで同社は段階的な移行戦略を立て、まず安全性が高いデータセンターへの移転を行い、その後クラウドへの移行を決定しました。
移行後はシステムが安定して稼働しており、災害時にも迅速な復旧が可能となるなど、事業継続性の大幅な向上を実現しました。同社は今後、SAP以外の基幹システムについてもAzureへの移行を検討しており、さらなるBCP体制強化を目指しています。
「Microsoft Azure」を導入した大学
ある大学では、2021年10月にMicrosoft Azureを導入しました。導入した背景には、オンプレミスのハードウェアが老朽化し、ちょうどリプレイスの時期を迎えていたことがあります。これを機に、BCP対策の一環として、研究支援システムや財務関連システムのクラウド化に踏み切りました。
導入後もシステムは安定して稼働しており、2022年7月時点でもトラブルは確認されていません。今後はクラウド化をさらに推進し、オンプレミス環境を必要最小限に抑えるという方針が報じられています。
「AWS(Amazon Web Services)」を導入した大手企業
ある大手企業では、災害時の事業継続性を強化するため、BCP対策としてAWSへの移行を実施しました。地震などで長時間の停電が発生しても業務が継続できるように、非常時のみクラウド上でシステムを起動する仕組みを構築しました。
これにより、平常時の運用コストを最小限に抑えながら、最大72時間の停電にも対応可能なBCP体制を実現。クラウドの柔軟性と冗長性を活かしたこの仕組みは、コスト効率と事業継続性を両立した好事例といえます。
「AWS」を導入した不動産サービス会社
ある不動産サービス会社では、オフィス内で運用していたファイルサーバーがOSとハードウェアのサポート終了を迎え、業務継続リスクが懸念されていました。特に物理サーバーは故障時の業務停止リスクが高く、社屋移転の際も障害となっていました。
BCP対策を重視した同社は、これを機にAWSへ全面的なクラウド移行を決定。AWSへの移行後、サーバー性能の向上により従業員からのレスポンス改善の声が上がり、物理サーバー廃止によって社屋移転も円滑に実現しました。
また、AWSの24時間365日の運用監視と定期バックアップの自動化で障害対応力も大幅に向上し、安定した業務環境を整えることに成功しています。
自治体のデジタルファースト
ある自治体では、災害に強い職場環境の構築を目的に庁内業務のデジタル化を推進しています。その背景には、過去に豪雨災害で庁舎が被災し、業務停止の被害を受けた経験がありました。
この教訓をもとに、災害の影響を受けにくいクラウド型コンテンツ管理基盤を導入。物理的な被害から情報資産を守る環境を整備しました。これにより、災害時でも業務を継続できる体制が構築されただけでなく、平時の業務効率も大きく向上しました。
BCP対策の手順

クラウド移行は、BCP対策において非常に有効な手段のひとつですが、それだけでは十分とはいえません。事業継続性を高めるには、クラウドの導入に加えて、自社に最適なBCP対策を策定する必要があります。
ここでは、BCP対策を策定するうえで押さえておきたい基本の6ステップを解説します。
- 基本方針を決定する
- BCP策定の社内体制を整える
- 自社の事業を分析し、中核事業を決める
- 中核事業復旧のための分析を実施する
- BCPを策定する
- 社内で共有する
以下で各ステップについて詳しく見ていきましょう。
1.基本方針を決定する
まずは、BCP対策の基本方針を決めましょう。BCP対策を策定する目的、策定までのスケジュール、担当者、教育や周知の方法などの方針を、主に経営陣で話し合って決めます。
方向性を明確に定めておくことで優先順位が決まり、策定がスムーズに進みます。
2.BCP策定の社内体制を整える
基本方針が決まったら、BCP策定の社内体制を整えます。BCP対策では、策定のためのプロジェクトチームを作り、BCP対策を推進するのが理想です。緊急時には各部署でそれぞれ違う問題が発生するため、複数の部署から人材を集めてチームを結成するのが良いでしょう。
同時に中小企業では、他企業や地域と連携することも事業の早期回復、継続に必要となります。BCP策定の社内体制はもちろんですが、社外とも素早い連携がとれるよう、普段から関係性を深めておくことが重要です。
3.自社の事業を分析し、中核事業を決める
チーム結成後に最初に行うことは、自社事業を分析して中核事業を決定することです。緊急時には、ほとんどの経済活動や機能が停滞します。限定された人材や設備では、すべての事業を同時に回復させることは不可能です。
そのため、複数の事業を実施している企業では、中核となる事業を決め、それを最優先で回復させることに注力しなければなりません。
中核事業は、以下のような観点で判断しましょう。
- 自社にとって利益が大きい事業
- 損害を受けた場合に自社の評価や市場シェア、顧客からの信頼を大きく落とす事業
- 法的・財務的にダメージの大きい事業
いずれも、売上や利益といった数字をもって判断し、客観的に選定することが重要です。
4.中核事業復旧のための分析を実施する
中核事業が決まったら、中核事業を復旧させるための分析を実施します。具体的には、以下の項目を分析しましょう。
- 中核事業を復旧・継続させるために必要な資源(人・物・金)
- 中核事業に損害を与えるリスク(自然災害、パンデミック、サイバー攻撃、事故など)
- リスクによって起こる課題(火災によって書類が失われ、これまでの取引が分からなくなる、サイバー攻撃によって顧客の情報が盗まれ信頼を失うなど)
上記を分析し洗い出したら、復旧までの目標時間と復旧のレベルを設定します。目標時間と目標レベルの設定には、顧客の意向が大切です。いつまでに、どの程度の復旧を求められているのかを平常時から確認しておきましょう。
5.BCPを策定する
中核事業を深く分析したら、いよいよBCPの策定に入ります。分析結果を元に、緊急時の具体的な対策を固めていきましょう。
BCP策定の際に考えておきたいのは「代替案」「発動条件」「BCP発動時の社内体制」です。
代替案
緊急時には、人材や設備、資金といったあらゆるものが不足します。不足している状態でも目標とした復旧時間に間に合うよう、事前に不足を補うための代替案を定めておきます。
例えば、人が不足した場合は、グループ会社やOB・OG、同業他社などに協力を仰いで人材を確保する、設備が不足した場合には、同社の別拠点を利用する、アウトソーシングで他社に依頼するなどの方法もあります。
事前に依頼や調整が必要なものに関しては、策定の段階で契約や協定を結ぶなどして対応しましょう。
発動条件
BCP策定時には、BCPの発動条件を明確にしておきましょう。発動条件をはっきりさせておくことによって、社員が緊急時にすぐに動けるようになります。
例えば「震度6の地震が発生したらBCP発動」と事前に周知しておけば、社員は地震が震度6であると知ってすぐ、定められた行動をとれるようになります。逆に発動条件を社員が知らない状態では、たとえBCPを策定していても緊急時の行動をとるべきなのか、裁量を仰がなければなりません。
初動が遅れることによって、被害が拡大したり、早期回復が難しくなったりするため、発動条件を明確にすることは非常に大切です。
BCP発動時の社内体制
BCP策定時には、BCPを発動した際の社内体制を定めておくことも重要です。緊急時に誰が何をするのか明確になっていないと、復旧が遅れる可能性が高くなります。
事前に社員を以下の4チームに分けておきましょう。
- 設備やデータの復旧など内部の課題を解決する「内部チーム」
- 顧客への連絡や調整を実施する「外部チーム」
- 復旧のための資金調達を実施する「財務チーム」
- 社員の安全管理や必要物資の確保などを実施する「後方支援チーム」
6.社内で共有する
BCPを策定したら、マニュアル化して社内で共有します。先述したように、BCP対策は策定しただけでは意味がありません。緊急時に問題なく利用できるよう、BCMを行うことも重要です。
マニュアルは常に見直して、社会情勢や経済状況によって随時変更。訓練や講習会なども実施し、社員一人ひとりが緊急時に何をすべきなのか、自覚できるような活動を行いましょう。
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しかし、BCP対策としてのクラウド活用には、適切なサービス選定、コスト管理、セキュリティ対策など専門的なノウハウが求められます。特にクラウドサービスは、利用方法次第で大きなコスト差が生じるため、実績豊富なパートナー選びが成功のカギとなります。
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